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中国の脅威への対処法 その9 アメリカでの制度をみよ

Japan In-depth / 2023年2月23日 18時0分

 私はこの20年ほど必ずこの国防総省の中国軍事力報告に目を通してきた。同時にその内容の注視すべき諸点を報道してきた。日本のメディアではつい数年ほど前まではこの報告書自体の内容に光を当て、細かく報道するという動きがみられなかったが、最近ではかなり詳細に紹介されるようになった。その内容は日本への直接の軍事的影響が明白な中国軍に関する新発見も多い。そんな新発見が日本自体の官民の組織ではなくアメリカの国防総省によって初めて日本側に知らされるという実例がこれまで数えきれないほど、繰り返されてきた。





 第二は「米中経済安保調査委員会」と呼ばれる組織の活動である。





 この組織は文字通り、米中両国間の経済と安全保障の動きを注視する。厳密にはその活動の目的は「米中両国間の経済関係がアメリカの国家安全保障に与える影響を調べる」とされている。その舞台はアメリカの連邦議会である。





 この米中経済安保調査委員会は議会に拠点をおく諮問機関だともされる。つまり議会や政府から諮問を受けて、特定のテーマを調べ、その結果から得られる政策提言を議会と政府に勧告する、という機能を与えられているのだ。





 現実の仕組みとしては議会上下両院の超党派の有力議員がこの委員会の運営のために合計12人の委員(コミッショナー)を任命する。委員はだいたいが中国や安全保障、あるいはマクロ経済の専門家である。委員会はこの委員を主体に中国に関する特定のテーマにその時期、その時期に合わせて焦点を絞り、討論し、研究する。





 委員たちはアメリカ政府の国務省やCIA(中央情報局)などの情報を利用するほか、独自に中国にも出向いて調査を進める。その間にワシントンの連邦議会で公聴会を開いて、特定テーマを審議する。この公聴会にはさらに個別の領域の専門家が招かれ、詳細な証言をする。討論は中国のサイバー戦略、宇宙の軍事利用からアメリカ企業の中国での振る舞いなどにも及ぶ。





 私はこの委員会の活動をその誕生の2001年からフォローしてきた。その活動のキメの細かさには驚嘆されることも多かった。一度は中国の石炭の炭鉱で大規模な労災事故が起きた際、アメリカ企業が関与しているか否かの詳細な探究があった。そのために中国の石炭産業に詳しいアメリカ側の専門家が各地の大学や研究機関から呼ばれて集まり、証言をするという展開に、アメリカ側の中国研究者層の厚さ、広さに驚かされた。





 この米中経済安保調査委員会の活動の結果は原則としてすべて公表される。毎年の年次報告書は数百ページにのぼる情報の宝庫となる。私はそのうちの2008年度の年次報告書のおもしろい部分を集めて、翻訳し、日本で単行本として出版したこともある。『アメリカでさえ恐れる中国の脅威!』(ワック株式会社刊)という書だった。内容はアメリカ側の調査による中国の軍事ハイテク取得、国家ファンドの戦略的利用、サイバーや宇宙の軍事利用などだった。同委員会は要するに経済と軍事の融合するそんなテーマを追及していたのだ。





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