ウクライナへの軍事支援に思う(上)オワコン列伝 その5
Japan In-depth / 2023年2月27日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・ロシアの戦車が携帯用対戦車ミサイルによって大打撃を受けた。
・NATO諸国が「戦車はオワコン」と考える風潮は無視できない。
・しかし、戦車が「オワコン兵器」かどうかは地形や脅威の形態、戦略による。
2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻は開始からちょうど1年となった。
はなはだ遺憾なことながら、双方に事態を早期に収束させるべく交渉すべき、という意思は見られず、先行きは未だ不透明である。
中国が停戦の呼びかけを行ったが、具体的な期限や条件は示されず、NATO事務局は、「中国はもともと信用できない」とのコメントを発表した。
昨年、ひとつの解決策として『最後は中国カードもあり得る』と題した記事を寄稿したが、やはりNATOは、ウクライナへの軍事支援を通じて、真綿で首を絞めるようにロシアを追い詰めて行こうという戦略が、成功裏に進んでいると自信を深めているのだろうか。
今年に入ってから、新たに新型戦車の供与が相次いでいる。ゼレンスキー政権はともかくウクライナの一般市民の身になれば、本当に必要なのは戦車ではなく和平実現に向けた努力だと私は考えるのだが。
これについては、粘り強く訴え続けて行くことしか私にはできないので、今次は、ウクライナでの戦いが各国の軍備・戦略に与えた影響について考察したい。
まずは戦車だが、当初ロシアの戦車が、米国から供与されたジャベリンなど、携帯用対戦車ミサイルによって大打撃を受けたことから、戦車を「オワコン兵器」だと見なす論調も見られた。
わが国でも財務省の一部から、防衛予算を巡る論議の中で、
「1輌数億円の戦車が、1発2000万円のミサイルにやられるのでは帳尻が合わない」
との声が聞かれたことは未だ記憶に新しい。
しかしそれなら、どうしてNATOは大量の新型戦車をこのタイミングでウクライナに供与したのか。
これについては、逆に、どうして今まで供与しなかったのか、と考えてみるのがよい。
すでに多くの映像が流れているが、前述のようにロシア戦車が対戦車ミサイルなどによって片っ端から破壊された事実は隠しようもなく、これがロシア兵の士気を大いに損ねたことは想像に難くない。
逆もまた真なりで、ロシアの対戦車ミサイルもかなり優秀であるから、西側の自慢の戦車が破壊される映像が流れるのは御免こうむりたい、という理由がひとつ。
もうひとつ、ウクライナも旧ソ連製の戦車をもっぱら使用してきたわけだが、ほぼ全てのモデルに自動装填装置がついていて、車長・砲手・操縦手の3名で運用が可能である。
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