やはり要注意「公共交通機関」本命は「進行方向多様性」~人流データからの発見~
Japan In-depth / 2023年3月14日 12時25分
実は、2019年12月の平均では毎秒3.4メートルという領域で感染者が増加していた。こちらは4%の人が電車に乗り、残りが歩いている状態だとすれば一致する。これらは、2019年から2020年にかけてコロナ禍により電車の利用者が7割減ったとされる当時の状況に合う結果である。
ところが、不思議なことに、2021年の7月下旬から8月上旬ごろには、人の移動速度が増えるにつれて感染者数が減るようになる(図1、右)。しかも、移動速度の平均は毎秒7.2メートルとなっている。中央値であれ4.6%程度となるが、それでも2020年の2倍程度が電車並みの速度で移動していたことになる。
ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」によると、自家用車を用いることへの関心が2021年は2020年の約二倍になっていたことから、この平均速度の増加は電車ではなく自動車、特に自家用車の利用が顕著に増えたことによると考えるのが、現在までに検討した最も有力な仮説である。
2020年に西村大臣からの政府声明で国民に推奨されたStay with Your Community(いつも一緒にいる人と接触するだけなら、感染爆発を招かないという、筆者が2020年に発表した原理)を、家族や親しい友人や同業者を載せるだけの自動車では乱さずに済むと考えると、この2021年の「逆転」はよくわかる結果である。
つまり、以下の3つの仮説が有力である。
感染拡大に、電車での移動はやはり影響していた自動車に乗り換えると感染拡大は抑えられる(以前私自身がシミュレーションによって示したように)
遠距離移動そのものが感染拡大原因であることから、(a)だけで感染場所が電車だとは言えないが、(a)と(b)から、電車の利用そのものが感染拡大の原因となっていたと考えられる
このようなわけで、次に「電車」や、電車の行き来する「駅」に焦点を当てて人々の動きを観察してみよう。
大学の近くの駅を出ると、大多数の人が大学に向かって歩いてゆく。こういったシーンは、歴史的名所のある観光地や初もうでの神社でも見られる。神社や城など、目的地の本堂や天守閣がひとつあって、訪れる人はほとんどがその目的地に向かってゆく。これと全く違う様相を見せるのが大都市の大きな駅で、様々な方向から人が集まり、また様々な方向に散ってゆく。
これらのうち、感染症の感染が拡大しやすいのは、どの駅の周りだろうか?
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