大江健三郎氏の自衛隊全廃論はいま
Japan In-depth / 2023年3月21日 21時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・1995年4月ノーベル文学賞受賞者大江健三郎氏は米国で講演、「自衛隊全廃」を主張。
・大江氏の過激な政治的発言に対し、アメリカ側からは正面からの反発も飛び出した。
・大江氏が、政治的にこれほど過激な発言をしていたことも忘れられるべきではない。
作家の大江健三郎氏が亡くなった。日本人では2人目だというノーベル文学賞の受賞者だった。88歳だったという。この高名な文学者の生前の功績を讃え、冥福を祈りたい。
しかし大江氏については国際的に高い評価を受けた文学者の足跡とは別に、きわめて活発な政治活動家としての軌跡があったことも忘れられない。その政治活動の主体は日本という国家のいまのあり方への根本からの批判、さらにその日本国を防衛するという概念の否定だった。だから大江氏は盛んに日本の自衛隊の存在自体をも否定していた。実際に自衛隊の即時全廃を主張していたのだ。
だが近年、闘病されていたせいなのか、大江氏が自衛隊について正面から論評したという記録にはお目にかかったことがない。日本国民の大多数が自衛隊の存在を肯定し、前向きな賞賛の意までを表するようになった現在、大江氏もその全廃論を撤回したのだろうか。あるいは意見は変わらず、沈黙していただけなのか。知っていた人がいれば教えてほしい。
私にはこの大江健三郎氏がアメリカの首都ワシントンで自衛隊全廃論を勢いよくぶちあげて、逆にアメリカ側から批判されるという光景を実地にみて、報道したという経験がある。
その結果の記事が産経新聞に掲載された。その記事は「大江健三郎氏、ワシントンで自衛隊全廃論」という見出しで、その他の媒体でも幅広く転載された。大江氏のワシントンでのこの発言を直接に現場で見聞した日本人記者はどうやら私だけだったようだった。
この大江発言は1995年4月28日だった。28年が過ぎたいま、大江氏の逝去、そして自衛隊への日本国民の意識の変化などを踏まえて、当時の大江発言とそれに対するアメリカ側聴衆の反応などを再現してみよう。そこにはいまの日本にとっての貴重な教訓も浮かびあがるような気がするのだ。
まず、私の当時の産経新聞記事は以下の見出しと前文だった。全体としては短い記事ではあった。
大江氏が「自衛隊全廃論」 米国講演、聴衆からは反発も
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