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牛乳の市場開放にはメリットもある 今こそ「NO政」と決別を その5

Japan In-depth / 2023年3月31日 11時0分

この時は、生乳の買い取り価格が上がらないことから、酪農の経営が厳しくなり、離農する人が増えたことが原因だと報じられた。





さらに度しがたいことに、今次も生産調整の結果、近い将来のバター不足を懸念する声が聞かれるという。まったく、なにを考えているのだろうか。





専門家集団であるはずの農水省がこれだから、市井の人たちが考えることが、いささかピント外れになるのも無理はない。





まったくの偶然ではあろうが、シリーズの冒頭で取り上げたコオロギ給食の話と、乳牛殺処分の話題は、相次いで報じられた。主にネットで、





「(昆虫食より)牛乳飲めばいいじゃないか」「バター作れよ」





といった声が湧き上がったのも、これまた記憶に新しい。





牛乳は「可逆性」を持つという、極めて特殊な農産物であることが、広く知らしめられていないから、こういう話になるのだろう。





具体的に、どういうことか。





牛乳=生乳から生クリームと脱脂乳が簡単に分離でき、さらに生クリームを攪拌するとバターが、脱脂乳の水分を取り除くと脱脂粉乳が得られる。攪拌と言っても、大がかりな設備は必ずしも必要でない。前述のドラマの中では、生乳が入った大瓶に棒を差し込み、気長にかき混ぜるだけでバターの出来上がり、だった。





可逆性というのは、こうして一度出来たバターや脱脂粉乳をもう一度混ぜて水を加えると、元の牛乳に戻るのである。





スーパーの牛乳売り場では、実際に「牛乳」と「加工乳」が売られており、一般に後者の方が少し安い。これは、生乳だけから作られた物を「牛乳」と呼び、生乳の他に前述の乳製品を混ぜた物を「加工乳」と読んでいるためで、他にコーヒー牛乳などの「乳製品」がある。





早い話が、牛乳が余っているからと言ってバターを大量に作っても、いずれは「加工乳」になるので、本質的な解決には全然ならない。





さらには、牛乳や乳製品は、貿易が著しく制限されている。たしかに生乳は腐りやすいので、貿易に「自然の障壁」があることも事実だが、現実には、国内の酪農家を保護するために、牛乳には25%、バターなどの乳製品に至っては200%という、べらぼうな関税を課す「保護貿易」を行っていたことこそ、本質的な問題であった。





しかも日本の酪農は、北海道においてはバターなどの加工原料乳、他の都府県においては飲料乳を主として生産するという、奇妙な「棲み分け」がなされている。





もう一度2014年のバター不足について述べると、海外から安いバターが流入し(この年、世界的にはバターが余っていた!)、国内需要に対して十二分な供給が確保されると、いずれそれは加工乳となり、価格を押し下げる。





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