食料安全保障に目覚めよ(下)今こそ「NO政」と決別を 最終回
Japan In-depth / 2023年4月3日 18時0分
もともと日本人が米をあまり食べなくなり、余っているというのに、農協が米だけは全量を買い上げる、という現在の食糧管理制度は、すでに時代遅れなのではないか、と。
私の答えは、イエスでもありノーでもある。
まず食糧管理制度(以下、食管)だが、これはたしかに、今風に言えば完全にオワコン化している。
前述のように米だけはJA(=農協)が全量を買い上げるため、農家としても、野菜や飼料用穀物などに農地を振り向ける決断を下しにくいし、有機農法も「高コスト体質」である、とされてしまう。
反面、色々と工夫して安全でおいしい米を作り出しても、食管制度のおかげで適正な利益が得られない、という問題がある。結果として、農家の後継者がいなくなり、耕作放棄地と称される荒れ地ばかりの風景が全国至る所で見られるようになってしまった。
本シリーズで繰り返し述べているように、食料と言えど商品である以上は、適正な市場価格で流通する仕組みを作るべき、という点については、異論など出ないだろう。
先ほども述べたが、具体的な方策としては米の飼料化を推進するということが、まず考えられる。
これはなにも、炊きたてのおいしいご飯を豚に食べさせろ、という話ではない。
牧畜の伝統が長いヨーロッパでは、穀物を人間と家畜が分け合って食べる、という考え方が根付いているし、生産量の調整弁としても、この方法は有効なのだ。
ある年が豊作で、米が余剰になったような場合、水田の一部で里芋を作る、というのも一案である。畑に比べて、同じ作付面積で二倍近くもの収穫量が期待できるし、味が水っぽくなるとも聞くが、最初から餌にするつもりなら「質より量」で問題はない。
米の余剰分は、翌年は古米になってしまうのだが、これも一部は現在の「政府備蓄米」のように安く売り、残りは飼料にするのがよい。
時折、日本において食肉自給率が低いのは、宿命のようなもの、と主張する人がいる。
と言うのは、牛肉1㎏を得るためには、飼料用のトウモロコシが11㎏必要となるし、豚肉でも同じく6㎏、鶏肉でも4㎏必要なので、つまりは膨大な飼料用トウモロコシを作らなければならないが、日本のどこにそれだけの農地があるのか、ということのようだ。
この数字自体は、おそらく正しいのだろうが(農水省の資料にも書かれている)、賢明な読者はお気づきのように、試算の根拠が、少々こじつけめいている。
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