食料安全保障に目覚めよ(下)今こそ「NO政」と決別を 最終回
Japan In-depth / 2023年4月3日 18時0分
家畜を飼育・肥育するのに必要な餌は、なにもトウモロコシに限らない。スペインの有名なイベリコ豚はドングリを主たる餌としている。
米の飼料化というのも同じ発想に立っていて、精米した後の糠はニワトリの餌に最適だし、稲藁を発酵させた飼料は牛の健康にもよい。
健康面というのは、前にBSEの話をさせていただいたが、これは「牛海綿状脳症」のことで、俗に狂牛病と呼ばれていた。
その原因は、もともと草食動物であった牛に、肥育が早まるからと肉骨粉(解体処理の過程で出る、くず肉、皮、骨などを粉末にした物)を与える事だとされる。直接的には、プリオンと呼ばれる細胞淡泊に異常を来した牛から作られた肉骨粉が混入し、それを食べた牛のプリオンがやはり以上となり、歩行困難から、やがて死に至る、という病気であった。
動物の成長にタンパク質は不可欠であろうが、日本では発酵食品を作る伝統的な技術がある。納豆を考えてみると分かるが、植物性の食品にもタンパク質を豊富に含んだ物はちゃんとある。
トウモロコシに話を戻すと、米国などでは人間が食するスイートコーンと、飼料やコーンスターチなどの原料になるデントコーンの両方を作っている。
この点、前述のように作付面積に限界がある日本では、スイートコーンに特化して栽培し、実は食用、茎や葉、加工した後や食べ残した芯は飼料と、使い分けるのがよいだろう。
あとは、農協の組織改革である。
前々から指摘されているように、化学肥料や農薬を売りつけたり、高価な農業機械の購入資金を融資したりする農協の経営姿勢が、むしろ日本農業の活気を損ねている。この発想を逆転させ、有機農法に補助金もしくは低利の融資をして応援する、という組織に生まれ変わってもらいたい。
農水省も同様である。
かねてからこの役所では、米・砂糖・牛乳の「三白」を、かつての専売品のように扱い、農水省官僚は、この三白を担当するのが出世コース、などと言われていた。どちらかというと市場の原理より政治判断が優先される分野なので、役人の腕前の見せ所、ということらしいが、とんでもない話である。
半世紀以上の長きにわたり、父子二代で日本の食糧政策の抜本的改革を訴えなければならないとは、それ自体が嘆かわしい話ではあるのだが、希望は決して捨てたくない。
今こそ日本人は知恵を働かせて、食糧危機に立ち向かう時なのだ。
(了。その1、その2、その3、その4、その5、その6)
トップ写真:巨大なコンバインを使用した米の収穫
出典:SAND555/Getty Images
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