国際金融市場の動揺 規制強化で金融機関の破綻はなくせるのか?
Japan In-depth / 2023年4月4日 11時0分
したがって、このような資金繰りの問題も、これまでのところ米国では主に地銀の範囲でしか起こっていない。
また、長期金利が上昇した場合、上述のようなメカニズムを通じて、どの程度損失が出るかを金融機関が的確に把握する点についても、規制当局は大銀行に求めているような目線での高度な手法を地銀には要求はしていない。
地銀のビジネス・モデルが、ウォール・ストリートの大銀行のように複雑ではないからだ。そもそも、この1年のような急速な長期金利の上昇が常に起こることを前提にした規制は、金融機関側からしても納得できるものではなかっただろう。
クレディスイスの経営行き詰まりにしても、国際金融市場の状況が、これほど速く変化することが分かっていれば、経営の立て直しをもっと急ぐよう当局もより強いプレッシャーをかけていたはずだ。結果的にそれが間に合わなかったということになる。
もう一つ、先月の出来事で特徴的なのは、当局の対応が、ルール通りでないことだ。米国では、預金保険の上限(25万ドルまで)があるにもかかわらず、かなり速い段階でそれを上回る預金も含めて全額を保護する方針が打ち出された。
金融不安の連鎖を断ち切るためにそれが必要と連邦政府が判断したことになる。これで預金流出が落ち着けば、その異例の対応が功を奏したことになるが、それでも、予め決めていたルール以上に預金者を保護する訳だから、甘やかしではないかという批判もある。
他方スイスでは、UBSというもう一つの大銀行がクレディスイスを買収することで事態の収拾が図られようとしている。言うまでもなく、規制当局も関与しての迅速な金融市場の動揺の抑制策である。
その実現の過程で、本来であればクレディスイスの株式が無価値にならない限り価値が保証されるクレディスイス発行の債券160億スイスフランを無価値にすることが発表された。
これは、スイス当局の破綻処理権限の行使の一環として決められたようだが、金融市場が予め受け入れていたルールには反するものだ。大きな銀行の破綻が金融市場に与えるマイナスの影響は測りしれない。
それが日本の銀行危機や先の国際金融危機の教訓だ。それを避けるためには、今回のような既存のルールの特例的停止もやむを得ないと当局が判断したのだろう。
■金融機関規制への含意
筆者は2006~2010年の間、バーゼル銀行監督委員会という、国際的に活動する銀行に対する規制のあり方を議論する国際委員会のメンバーだった。
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