国際金融市場の動揺 規制強化で金融機関の破綻はなくせるのか?
Japan In-depth / 2023年4月4日 11時0分
この時期、国際金融危機の全容が次第に明らかになり、それへの対応のため、多くの国で国民の税金で銀行経営の失敗の後始末をすることになった。当然、規制のあり方についても、その反省の上に、より厳しいものとすべきだという意見が多数派だった。
その後、長い時間をかけ、また大変な国際交渉を経て、現在バーゼル3と呼ばれる国際的に活動する銀行の規制の枠組みが出来上がった。その枠組みがあっても、今回のようなことが起きてしまう。
これを契機に、再び規制の見直しが行われるだろう。しかし、そうしたからと言って、将来の危機が完全に避けられるかといえば、きっとそうはならない。
何故ならば、第一に、世の中では、必ず常ならぬことが起こる。それは歴史の必然だ。今回の場合は、昨年来の急速な金利上昇がそれだ。そのような言わば異常事態を前提にした厳しい規制を平時から掛けることは、おそらく合理的とは言えない。
米国でも、トランプ政権下で一部の銀行規制が緩和された。そうしたことを踏まえれば、次に起こる異常事態の際にも、また袋の一番弱いところが破けることになるだろう。
第二に、そうなった場合に、その時点でのルール通りに対応していたのでは、不安の連鎖が有効に遮断できない可能性はなくならない。
金融市場の不安心理は、広がり始めてしまったら制御は難しい。今回も、米国、スイスのどちらの当局も、現行ルールを超越する異例の判断を示した。
それに対して当然批判の声もあるが、しかしそういう異例の判断があったからこそ、金融市場の安定が保たれているのかもしれないのである。この点は将来も変わらないだろう。
金融危機は文字通り危機であり、そのあり様は一回一回違い、そうであるが故に予め良いルールを決めておけば必ず対応できるとは限らない。
したがって、平時には普通に起こることを前提にリスクを管理し、危機と認定されれば平時のルールを超越して対応するということが、どうしても避けられないのではないだろうか。
今回、これで落ち着くかどうかはまだ分からない。しかし、一つ言えることは、先の国際金融危機の教訓を生かした現在の規制体系は、究極のところ、国民の税金を二度と銀行経営の失敗の穴埋めに使わないことを目指したものであり、それは今のところ実現できているということだ。この一点について、バーゼル3の枠組み作りの片隅にいた一人として、誠に良かったと思っている。
トップ写真:クレディスイスのオフィス(2023.3.21 ロンドン)
出典:Photo by Ming Yeung/Getty Images
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