移民労働者と技能実習生(上)ポスト・コロナの「働き方」について その1
Japan In-depth / 2023年4月15日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・コロナ収束の中、外国人技能実習制度廃止の動き。
・多くの企業が彼らを「日本人より安く雇用できる単純労働力」としか見なしていない。
・過去に日本政府は企業利益を守り、労働者をないがしろにしてきた。
新型コロナ禍も、ようやく収束に向かいはじめたようだ。
卒業式、入学式のシーズンでも、マスク着用は「個人の判断」でよしとされたし、花見も解禁。そして入社式もリモートでなく対面で行われるようになった。
その影で、外国人技能実習制度を廃止しようという動きが進んでいる。
4月8日、政府の有識者会議が、この制度を廃止し、中長期的な視点で外国人労働者の受け入れを拡大すべきだ、との提言を行った。現時点では間報告の、そのまた叩き台という段階だが、秋までには最終報告をまとめたいとしている。
家族を帯同しての来日や、来日後の勤務先変更(=転職)をどこまで認めるかなど、まだまだ問題は山積しているが、基本的な方向性としては、日本も移民政策へと舵を切ることになるらしい。
こう述べると、違和感を持つ読者も、中にはおられようか。日本はすでに「隠れた移民大国」であるという話を、一度くらいは耳にされた方も少なくないと思えるので。
私は横浜市で暮らしたことがあるのだが、コンビニに行くと、大半の店員さんが「ま」とか「グエン」といった名札を着けているのを見て、やはりこういう時代なのだな、と考えたものだ。「ま」さんは「馬」姓の中国人で「グエン」さんは、おそらくインドシナ半島出身者だろう。
横浜は、昔から外国人が大勢暮らす街として知られているが、総本山少林寺のお膝元、香川県多度津町でも、中国人がかなり多い。瀬戸内海に面した港町で造船所があり、そこで働いているわけだが、駅もしくは空港から本山に直行し、次の日はホテルと本山を往復するだけだった頃は、彼らの姿を目にすることなど、まずなかった。
新型コロナ禍以前の話ということになるが、OECD(経済開発協力機構)が示した統計に依れば、この年に3ヶ月以上滞在する目的で日本を訪れた外国人は50万人を超える。
この数字は、ドイツ、英国、スペインに続いて世界第4位だが、総人口も違うし、スペインの場合など、中南米のスペイン語圏から「数世紀ぶりに里帰りした」という大半なので、単純な比較は出来ないだろう。
続いて2019年の統計を見てみると、この時点で日本国内に居住し、生活の糧を得ている外国人は250万人を超す。
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