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移民労働者と技能実習生(上)ポスト・コロナの「働き方」について その1

Japan In-depth / 2023年4月15日 11時0分

マイホームと家族のためにと、会社の不正など見て見ぬふりをする小心翼々たるサラリーマンが、その家族に裏切られる(妻は不倫、長女は妊娠、長男は家出)姿を見て、当時多くのサラリーマンが考え込まされたと聞く。





そのような現実(一部ではあったろうが)を知ってか知らずしてか、政府は企業が「実習生」を労働力として扱うことを追認して行く。具体的には1993年に「技能実習制度」が始まり、建設業や食品製造業など86業種で、最長5年間、働きながら技能を学ぶことが認められるようになったのである。これまたタテマエとしては、





「出身国では取得困難な技能等の習得・習熟・熟達を図る」





とされているが(JITCO=公益財団法人 国債人材協力機構のサイトより抜粋)、多くの企業が技能実習生を「日本人より安く雇用できる単純労働力」としか見なしていないのが現実だ。





このように述べると、各方面から異論・反論が聞こえてきそうだが、そもそも論から言うならば、彼ら技能実習生には労働基準法が適用されないので、しばしば最低賃金すら支払われず勤務時間の制限もない。





日本国民には「職業選択の自由」が憲法で保障されているが、彼らの場合は逆に移動の自由すら認められていないため、ひどい扱いを受けても辞めることもできない。結果、実習生の「失踪」が相次ぐ事態となった。





現実問題として、苦情が絶えないことから、2022年10月に全国197の事業所への立ち入り調査が行われたが、うち145カ所で、労働基準法に適合しない勤務実態が明らかになったという。とは言え、前述のように彼らは法的な保護を受けられる「労働者」ではないため、当局としても有効な手立てがないのである。





一方、良心的な事業所もちゃんとあるし、個人的な話ながら、実際にそうした企業経営者の知人もいるのだが、これもこれで問題があるのだ。





たとえばコンビニでも、単なるアルバイト店員は、それこそ高校生でも務まるだろうが、仕入れや商品管理までも任せられるようになるには、やはり年単位の時間がかかるもので、その場合、5年という期限が定められているために、ようやく戦力になった従業員に帰ってもらわなければならない、ということにもなるのだ。





今次の、技能実習制度を廃止して、新たな移民政策の枠組みを作ろうという動きは、もちろん評価できる面もあるが、過去に、日本政府の主眼は一貫して企業の利益を守ることに置かれており、働く者はないがしろにされてきた、という点を忘れてはならない。





次回は諸外国の例も参考に、この問題をもう少し掘り下げる。





(つづく。)





トップ写真:休憩する労働者たち 出典:Photo by Trevor Williams/Getty Images




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