本当に「AIが仕事を奪う」のか(下)ポスト・コロナの「働き方」について その4
Japan In-depth / 2023年4月22日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・超高齢化社会とハイテク普及により働き方も変化せざるを得ない。
・警備員やドライバーは「誰でもできる仕事」と見なされているが異なる。
・技術の進化は労働環境を改善する福音である。
前回の冒頭、日本国内の601職種のうち49%が、将来的にAIやロボットで代替可能になる、との研究結果が発表されたと述べた。
単純計算で300にも及ぶ職種が「AIに仕事を奪われる危機」に直面しているわけで、一般事務職から建設労働者に至るまで、分野も幅広い。
念のため述べておかなければならないが、この研究報告において、多くの仕事を「AIやロボットに置き換えて行くべきだ」との主張はなされていない。ただ、日本人なら誰もが知る通り、今後10~20年間に起きるのは、超高齢化社会の到来とAIに代表されるハイテクの普及が同時進行するということであり、その中で日本人の働き方も大きく変化せざるを得ない、という話なのである。
一方で、ある種の偏見と言うべきか、警備員やドライバーなどは「誰でも出来る仕事」と見なされ、一番先にロボットに置き換えられそうなイメージで捉えられている。
しかし、本当にそうだろうか。
まず警備員から見ると、実は単一の職種ではなく1号(施設警備)、2号(雑踏警備)、3号(輸送警備)、4号(身辺警備)に分類されており、それぞれ異なる研修カリキュラムや資格が存在する。
ざっくり説明すると、1号は読んで字のごとく会社や銀行、博物館などにいる、もっとも一般的にイメージされる警備員で、2号は工事現場や駐車場の交通整理、3号は代表的なものが現金輸送車で、4号は俗に言うボディガードだ。
ベテランになると複数の業務をこなせる人も多いのだが、1号なら1号に限っても、人の出入りのチェックから巡回、クレーム対応まで、仕事内容は結構幅広い。
受付くらいならば、ロボットで代替することも不可能でないと思うが、もっとも重要な、緊急事態への対応はどうするのか。
SFアニメの世界では、しばしば警備ロボットが登場するが、現実的に考えるとコストの問題があるので、そこまで高度なロボットを多数揃えるよりは、相応の時給を払っても人を雇った方が安い、ということになりそうだ。
多数と述べたのも実は結構重要な点で、警備員は全国で60万人近くいるとされており、警察官(30万人弱)の2倍近い。にもかかわらず人手不足は深刻で、いつでもどこでも募集している観がある。
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