ザンビア大付属病院、血液内科での研修記録
Japan In-depth / 2023年4月23日 7時0分
宮地貴士(ザンビア大学医学部付属病院血液内科)
【まとめ】
・ザンビア大学医学部付属病院の血液内科で研修医として働いている。
・その場にある資源で工夫する「improvise」という考え方に学ぶもの多し。
・テイラーメイド医療を創り上げる血のにじむような医師の努力が医療現場に広がっていた。
私は秋田県横手市の平鹿総合病院に勤務する初期研修医だ。1年目の研修が終わったタイミングで学生時代から医療支援で関わってきたアフリカ・ザンビア共和国に来ている。100床の地方中核病院、1,600床以上を有する国内最大の医学部付属病院でそれぞれ1週間ずつ研修医として働いている。本稿ではそこでの学びについてご紹介したい。
「尿道カテーテル挿入セットになぜかコンドーム?」、「末梢ルートは全て18Gのカニューレ!」、「腹腔/胸腔穿刺、中心静脈カテーテル留置すら無麻酔!」
現地の医療現場は驚きでいっぱいだった。フォーレを挿入する際に使用するキシロカインゼリーが切れているためコンドームについているローションをカテーテルに塗りたくっていた。18Gの針は非常に太く痛いため全身麻酔後のルート確保等に使われているが、これしか在庫がないためしょうがない。局所麻酔も貴重な医療資源でありメスを用いた切開等の手技でない限りあまり使われないようだ。
現地の医療者たちはよく「improvise」という単語を使う。その場にある資源で工夫するという意味だ。冒頭に書いたような医療処置のimproviseは非常に痛みも伴うため必ずしも患者にとって最適ではない。しかしながら、病気の診断、治療方針の決定という点に関してはimproviseの考え方は私達も学ぶことが多い。
現在、私が働いているのはザンビア大学医学部付属病院の血液内科だ。専門医は2名、内科専攻医が6名、研修医が4名所属している。患者は18人(2023年3月29日時点)で慢性骨髄性白血病や多発性骨髄腫、悪性リンパ腫といった日本でも比較的多くみられる疾患からsickle cell病や重症マラリアによる貧血、小麦アレルギーに起因するCeliac病といった現地に特有な疾患まで幅広く担当している。
基本的に検査や治療は患者の自己負担になる。赤血球や白血球、血小板等の数を評価する血算、腎機能や肝機能を調べる生化学検査は病院内のラボで行われ、1回ごとに20Kwacha(日本円で150円程)かかる。CRPの測定や腫瘍マーカーは外注となるためそれぞれ200K、500Kほど自己負担が発生する。X線は40K、超音波は60K、CT検査となると1,000Kだ。現地のファストフード店などで勤めている人で月の基本給は1,500K(10,000円-15,000円程度)である。
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