ストが多発する国、見られない国(下)ポスト・コロナの「働き方」について 最終回
Japan In-depth / 2023年4月28日 0時0分
1917年、ロシア社会主義革命の結果、世界で初めての共産党政権が誕生すると、各国の労働運動や社会運動も大きな影響を受け、日本においても、労働組合運動の左傾化と政府による弾圧が、ともに先鋭化するという事態を招いた。
その後の経緯まで深く掘り下げる紙数はないが、結論から言うと、昭和初期の軍国主義体制下、労働運動は反戦思想、ひいては共産主義思想と同一視されて、多くの活動家が逮捕され、終戦まで刑務所に入れられた一方、世に言う翼賛的な労働運動、すなわち戦時経済に協力的な組合だけが生き残ったのである。
そして日本はアジア太平洋戦争に敗れ、日本国憲法が制定されることとなった。
憲法第28条において、労働者の団結権が保障され、労働組合法においてはストライキの権利(以下スト権)も保証された。
具体的には、ストライキによって企業が損害を被ったとしても、労働組合が賠償責任を問われることはないし、ストライキ中の事業所に、公共職業安定所(今ではハローワークとして知られる)や人材派遣会社が、臨時雇いの労働者を送り込むことは禁止されている。
こうして日本の労働組合運動は息を吹き返したのだが、その結果、左翼政党・団体の影響力が強まり、これを危惧したGHQ(占領軍総司令部)は、1948年に政令201号を公布。公務員のストライキは「公共の利益に反する」として、全面的に禁止した。
1950年、サンフランシスコ講和条約の締結によって、日本は独立を回復したため、GHQの政令は無効になったが、同じ年に施行された国家公務員法と地方公務員法の中にストライキを禁止する条文が盛り込まれており、今日まで改正されていない。
1949年には、それまで国営事業であった国鉄、専売公社、電電公社が「公共事業体」として再スタートしたが、ここでもやはりストライキが禁じられていた。
しかしながら1960年代に入ると、毎年「春期賃上げ闘争(以下、春闘)」に際して、国鉄を中心にストが頻発し、年中行事の観を呈するまでになる。
前述のように、国鉄労働者のストは違法ということになるが、労組もさるもの、日本以外ではあまり聞かない「順法闘争」を編み出した。
列車の運行には、安全確認など細かな作業がつきもので、その手順も法令などで定められているのだが、現実問題としては、これを厳格に守っていたらダイヤ通りの運行は難しくなる。悪く言えば「適当にやっていた」わけだが、これで事故率が世界一低かったのだから、あっぱれ日本の労働者、聞け万国の労働者……という話ではなくて、こうした安全確認などを法令通りの手順でこなすことが、ダイヤの乱れを招き、国鉄上層部に揺さぶりをかけたのである。
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