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ストが多発する国、見られない国(下)ポスト・コロナの「働き方」について 最終回

Japan In-depth / 2023年4月28日 0時0分

 当時、国鉄労働組合(国労)、国鉄動力車労働組合(動労)の組織率は、全従業員の6割を超えており、管理職は組合員になれないので、現場での勢力は非常に大きかった。しかも、動労には新左翼の革マル派(革命的共産主義者同盟全国委員会・革命的マルクス主義派)が浸透しており、立花隆氏の『中核VS.革マル』(講談社)などによれば、革マル派の副議長と称される松崎明氏が、動労東京地区本部の委員長であり、青年部では、29地区のうち9地区で執行部を独占し、なおかつ本部を掌握していた。


 1975年秋には、前述のように公共事業体の労働者にスト権が認められていないことを不服として、世に言う「スト権スト」も実際されたが、闘争は頓挫し、以降わが国におけるストライキは減少の一途をたどることとなる。


 具体的には、ピークと言われた1974年は、半日以上のストライキ件数が全国で5197件、参加人数362万0283人であったのに対し、2010年には38件、参加人数2480人と、まさしく見る影もない。


 動労など、1986年の国鉄民営化に際して、民営化反対を唱える総評・国労を尻目に、


「組合員の雇用を守ることが最優先」


 であるとして、民営化賛成に転じた。その結果、民営化後のJR総連においても、松崎氏と革マル派は隠然たる勢力を保持し得たのである。松崎氏は2010年に他界したが、彼と動労→JR総連の顛末は『暴君』(牧久・著 小学館)という本に詳しい。


 結論のみここで述べれば、2018年に松崎氏率いるJR東労組が30年ぶりにスト権の行使を示唆したところ、組合員役4万6900人中3万5000人以上が脱退する、という事態を招いてしまった。背景にあるのは、


「労使協調路線を堅持するということだったのに、話が違うではないか」


 という組合員の思いで、わが国でストライキのニュースを聞かなくなったのは、この労使協調路線に最大の原因が求められると、衆目が一致している。


 日本独自の終身雇用制のもと「会社は家族」という意識が浸透し、経営陣と労働者が激しく対立することを忌避する風潮が強かった上に、労働組合の幹部になるような人は、


「リーダーシップがある」「できる人だ」


 という評価を得て、管理職に登用、平たく言えば出世が早まるという傾向まであった。


 バブル崩壊後の不況の中、働く者の実質賃金は下がり続けているというのに、ストのニュースを聞かなくなって久しいのは、こうした労使協調路線とともに、労組の側にも


「組合員=正社員の雇用を守るのが第一」


 という考えが抜きがたく存在するからである。言い換えれば、日本の労働者は今や、正規雇用と非正規雇用とに分断され、団結・連帯する意識さえも失ってしまっているのだ。


 ストライキが頻発する事態も、もちろん困りものだが、働く者の権利の為に闘うことを忘れた日本の労働組合運動もまた、いかがなものかと思うのは、私一人だけだろうか。


(了。その1、その2、その3、その4、その5、その6)


トップ写真:労働者らの線路座り込みによる抗議 1960年6月7日 東京・三鷹


出典:Photo by Keystone/Getty Images


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