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グローバル経済の新局面―新しいゲームのルール―

Japan In-depth / 2023年5月1日 11時0分

リーマン・ショックは、米国を軸に速いスピードで展開する経済のグローバル化への最初のブレーキだったかもしれない。市場メカニズムをフルに使い、株主利益の最大化を優先する経済運営に対し、徐々に疑問が広がり始めた。地球環境や生物多様性、あるいは人権といったことを重視する動きが強まったのも、リーマン・ショック後である。





米国を軸に世界が成長していく図式に対しても、実力を付けた新興国側から待ったがかかり始めた。中国やロシアが自主路線を強めたのも2010年代以降のことだ。その様な新興国側の自主路線は、ついには中国と米国との対立の激化、ロシアのウクライナ侵攻といった事態に至る。地球規模での経済統合の動きは、ここへ来てはっきりと変わってきた。





■局面が変わる時に気を付けるべきこと





このように、グローバル経済のゲームのルールは2020年代に入って新しいものになりつつある。そのような局面変化の初期には、当然、これまでと同じにはいかないので、先行きに対する悲観的なイメージが広がりがちだ。





実際問題、急速にビジネスをグローバル化してきた多くの企業のサプライチェーンにおいて、ロシアを外さなくてはいけないし、中国についても見直さなくてはいけなそうだ。国内への生産拠点の回帰は雇用の観点からは歓迎できる。しかし、例えばサプライチェーンを友好国との間で張り替えるにしても、それはコスト増には変わりない。既に、化石燃料の生産大国であるロシアが外れたことは、世界的にインフレ圧力を生んでおり、そのため2022年を通じて海外の金利は大きく上昇した。





そのような展開を前に、どうしても先行きに悲観的になりがちだが、思い返せば1980年代までの東西冷戦構造の下でも、西側諸国の経済は景気循環を繰り返しつつ成長を続けた。さらに、日本の高度成長も朝鮮戦争とともに始まり、ベトナム戦争が続く中で実現した。局面移行の初期段階が過ぎれば、新しい定常状態の中でまた経済は動いていく。大事なのは、その過渡期をいかにスムーズに乗り切るかだ。





米中対立が厳しくなる中で、心配事の1つは台湾を巡り両国の武力衝突が起こるのではないかということだ。何らかのボタンの掛け違いが大規模な衝突に繋がった例は、歴史上たくさんある。第一次世界大戦の勃発などはその典型例だろう。米中の間に見解の相違があることは動かしがたい事実だが、そうではあっても致命的な大混乱に至ることなく、これからの過渡期を乗り切れるかどうか。まさに国家運営の知恵が試される。





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