「激動の時代と広島G7サミット」
Japan In-depth / 2023年5月14日 12時34分
Japan In-depth 編集部(樊明軒、菅谷瑞希)
【まとめ】
・G7サミットでは、他国の価値観を理解し我々が擁護する価値観に謙虚になるべき。
・「グローバルサウス」新興国を味方につける必要がある。
・新たに「最後の被爆地」を生まないよう訴え続けることが重要だ。
昨年から今年にかけて、ウクライナ戦争の長期化に加え、バイデン大統領就任後初の米中首脳会談、12年ぶりの日韓シャトル外交など国際情勢が目まぐるしく変化している。
こうした中、5月13日に上智大学で行われた講演会『激動の時代とG7広島サミット』では、慶應義塾大学の細谷雄一教授や一橋大学公共政策大学院長秋山信将教授、第一生命経済研究所主席エコノミスト西濵徹氏ら学識者が、19日に開かれるG7広島サミットの焦点や国際社会の行く末について議論を繰り広げた。
日本は今年のG7サミットの議長国を務め、岸田首相は「G7の首相が胸襟を開いて議論を深め、未来に向けてのアイディアとプランを明確に提示するよう、議長国として主導していきます」と述べている。特に今回の広島サミットでは、世界の分裂が進む中で新たな国際秩序を作ることが重要な議題だ。
世界がどんな方向へと進むか不安が絶えない今日、本講演は世界を分析し先を見据えるヒントを示唆してくれる。そこで、今回は講演の内容を基に日本の安全保障戦略や他国との関係構築の在り方を考察し、今後の世界を検討する一助としたい。
▲写真 外務省外務報道官小野日子氏の挨拶 © Japan In-depth 編集部
講演会は、第一部「国際政治×国家安全保障に果たすG7の役割」、第二部「国際経済×高まるグローバル・サウスの存在感とG7」の二部構成であった。
第一部の最初に、細谷雄一氏からG7サミットの存在意義について見解が述べられた。近年は新興国が台頭しその相対的な影響力低下が指摘されているが、「G7は世界の分断が進む中でも機能している数少ない国際枠組みだ。それは人権や法の支配、民主主義といった価値を加盟国が共有しているからこそ可能なことだ」。
その価値がいかに国際社会に貢献するかという点について、秋山信将氏は先進国の押し付けとしてではなく、共感を持って新興国に受け止めてもらえるように発信することが重要だと述べた。中露の批判ではなく、それを包摂する国際秩序を構築する際に価値観が重要となるのだ。
このように、G7は普遍的価値の共感を得られるよう発信する役割があるが、その決定には法的拘束力が無いが故に効果を懸念する声も上がった。それに対し西濵氏は、「今回のサミットにインドや韓国も参加するように、より多くの国が意思を表明し、G7もそれに耳を傾けることで、納得感と説得力のある決定を下すことに意味がある」と述べた。
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