姜慶五教授から学んだこと
Japan In-depth / 2023年5月26日 8時14分
上昌広(医療ガバナンス研究所理事長)
「上昌広と福島県浜通り便り」
【まとめ】
・姜教授は福島を訪問、帰国後現状報告し、風評被害緩和に貢献した。
・我々は姜教授が信頼関係を築いている温州医科大学を訪問した。
・東日本大震災をきっかけに始まった福島と中国の草の根交流が着実に深まっている。
韓国政府の福島第一原発事故の汚染水視察団が来日した。現地を訪問し、処理施設などを見学するとともに、日本側の専門家と情報交換するようだ。マスコミには賛否両論が溢れているが、私は大きな一歩だと思う。それは、現場を見て、情報を共有することが相互理解に繋がるからだ。私にも同様の経験がある。それは復旦大学公共衛生大学院の姜慶五教授らとの交流だ。
姜教授は、中国を代表する公衆衛生の専門家だ。私が彼と知り合ったのは、約15年前のことだ。医療ガバナンス研究所の谷本哲也医師、谷本医師の九州大学医学部の同期で整形外科医の陳維嘉医師の紹介だ。陳医師は上海出身。お父上は復旦大学の整形外科の元教授で、姜教授の先輩に当たる。このような人間関係から、「信頼できる人物」として、我々に姜教授をご紹介いただいた。
初めて姜教授とお会いした印象は、まさに中国で言う「大人」だった。柔和な笑みを浮かべ、我々を立てながら、部下たちを差配して物事を進めていく。その周囲には他の教授や役人たちもいるが、大学生や大学院生が集う。姜教授が周囲から尊敬されているのが、よく分かった。
2011年2月には、我々の研究チームの児玉有子看護師(現星槎大学教授)が、上海を訪問し、上海の幾つかの病院との共同研究を取りまとめた。帰国した児玉看護師は、「姜先生の根回しのお陰で、どこの病院もとても親切に対応してくれました」と筆者に語った。
東日本大震災から数ヶ月後、姜教授から、当研究所の中国人スタッフである梁栄戎氏を介して、「日本のために何かできることはないか」と連絡が入った。当時、日本には多くの支援物質が届いていた。これ以上の物資は不要だ。また、姜教授は医師や看護師など医療従事者ではない。彼の専門は公衆衛生だ。私は、「福島に来て、現場を見て欲しい」と希望した。
その後、姜教授のチームは何度も来日し、福島に足を運んだ。写真1、2は2013年4月に福島県南相馬市の小高区の被災地を訪問し、その後、南相馬市役所で桜井勝延市長と情報交換をしている光景だ。
↑写真2( 南相馬市役所にて。左から二人目が谷本医師、ついで筆者、姜教授、桜井勝延市長、右端が梁栄戎氏)
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