「睡眠薬で死ねるんですか?」
Japan In-depth / 2023年5月26日 11時0分
筆者は東京下町で10年間以上一般外来診療していた経験がある。現在福島県相馬市で内科診療を行っている。着任当初、睡眠薬を飲んでいる患者さんの多さに驚いた。正確に調べたわけではないが、東京の患者さんより内服している割合は高いという印象だ。田舎の夜は暗く、静かだ。夜の孤独に耐えるのは辛い。コロナ禍で他者との交流が減り、孤独感から眠剤使用者が増えている可能性もある。
●大量服薬すれば死ぬのか?
現在一般的に出回っている睡眠薬や向精神薬は、大量に飲んでもなかなか死なないようにデザインされている。昭和39年の犯罪白書によると、当時ハイミナールなどの睡眠薬で陶酔感を楽しむ「睡眠薬遊び」というのが流行した。当時の睡眠薬は「バルビツール酸系」という依存性や致死性の高いものが主流であった。これらの睡眠薬は自殺に使われたりすることがあったため、現在の医師はほとんど投薬していない(少なくとも内科医は)。今回歌舞伎役者の親の死に関連したとされる「ハルシオン」(編集部注:写真週刊誌FLASH報道による)は「ベンゾジアゼピン系」であり、致死性に関してはほとんど耳にしない。
ただし、認知症との関連の報告はあり、高齢者には慎重に投与するようにとされている。ただし、患者さんから希望されれば、投薬することはある。なぜなら睡眠自体が治療だからだ。睡眠不足は高血圧や高血糖など生活習慣病を悪化させる危険性がある。逆に患者さんの中には睡眠薬に抵抗のある患者さんも少なくない。そういう患者さんに対しても「黙って一週間だけ飲んでみて。そのあとは飲まなくていいから」と説得し、睡眠薬を内服してもらって血圧が低下したケースもある。
逆に、眠剤に依存している、耐性化が進んでいるというケースでは種類を変えたり、偽薬を使うこともある。在宅患者さんの場合、意識朦朧状態での転倒が問題になる。そういう場合家族の理解を得た上で、実際に偽薬を用いている。こういう医療は、医学的側面から批判されるかもしれない。患者一人一人の事情を理解した上で医師の裁量で投薬することは医学的には間違っていても、医療としては正しい場合もある。臨床とはそういうものだ。
●はたして向精神薬だけだったのか?
2009年8月28日米国の歌手マイケルジャクソン(享年51歳)が薬物中毒で亡くなっている。マイケルの主治医は不眠治療のため、6週間にわたって毎晩プロポフォールを投与したという。
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