仏、移民法改革で議論続く
Japan In-depth / 2023年6月3日 23時0分
Ulala(著述家)
「フランスUlalaの視点」
【まとめ】
・仏で移民法改革のプロジェクトが2月にスタート。
・共和党と連立与党では異なる移民法案を提出している。
・国民の過半数は移民が「多すぎる」と感じている。
多くの移民を受け入れてきた歴史のあるフランスでは現在、移民法改革のための話し合いが始まっている。移民法改革のプロジェクトは2月にスタートし、5月、6月には上院と国民議会で決議が行われる予定だったが、年金改革の混乱が続き、国を二分しかねない繊細な配慮が必要な移民法案を検討する時期ではない、と延期されていたのだ。
ようやく年金改革の混乱も落ち着いたため、エリザベット・ボルヌ首相は、10月から上院での審議を始めるために7月までに法案が提出されることを希望している。
■ 複雑な問題を多く含む、移民法の改革
2月1日にプロジェクトが始まった移民法改革。その時点で、フランス国内の労働関連を取り仕切るオリヴィエ・デュソプ労働大臣と、治安を取り仕切るジェラルド・ダルマナン内務大臣が対になる移民法案を提出した。労働大臣の法案には「よりよい統合」が盛り込まれており、内務大臣の法案には「よりよい追放」を求める文章が含まれている。
主な内容は、人手が足らず危機状態の分野の仕事に就く場合の滞在許可証の発行基準の緩和、 「共和国の価値観を尊重しない」外国人の追放促進などだ。また、そのほかにも、国境の管理強化についても触れられている。
ダルマナン内務大臣は、これらの文書をもとに話し合いを行い、各議会のグループによる提案と合意を「6月末」までに提示することを目指している。重要なのは10月に上院で文書について議論し、その後11月か12月に国民議会で議論することだ。
しかし、ここにきて右派の共和党(LR)から、かなり厳しい内容の提案が提出された。共和党の合意はとても重要なため政府側も協力してやっていこうと呼びかけながら、対応にも慎重だ。というのも、上院では共和党と中道勢力が合計で過半数を握っており、連立与党は共和党の助けを借りて法案の可決成立を図る必要があるからである。連立与党だけで過半数を取れなかったマクロン政権では、共和党の協力が不可欠なのだ。
共和党は、「フランス人はあらゆる世論調査で『移民が多すぎる』と言っている。われわれは主導権を取り戻さなければならない」「大量移民を阻止する」「『我々が誰を歓迎したいか』を決めるのはフランス人次第だ」といったような内容を主張している。そして、「欧州との約束のため、我々はこの移民圧力に耐えることはできない」とし、フランスが「国民投票によって我が国の主権を取り戻す憲法改正」を求めた。また、「議員が望むのであれば、いかなる状況においても国内移民法が優先されなければならないと言うべきである」とも述べている。
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