金正恩、軍事衛星発射失敗で威信失墜
Japan In-depth / 2023年6月13日 23時0分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・北朝鮮は「軍事偵察衛星1号機」を発射したが、失敗。
・原因は、米韓日の圧力強化で守勢に追い込まれた金正恩の焦り。
・金正恩の怒りは、間もなく開かれる党中央委員会総会の幹部人事で明らかになる。
北朝鮮は5月31日午前6時29分頃(韓国軍合同参謀本部発表の時刻、北朝鮮は6時27分と発表)、平安北道鉄山郡東倉里(ピョンアンプクト・チョルサングン・トンチャンリ)の西海(ソへ)衛星発射場で「軍事偵察衛星1号機」を発射した。
2016年の打ち上では「地球観測衛星」の打ち上げと主張し「平和利用」を口実としたが、今回の偵察衛星に関しては「自衛力強化」を主張し、米韓に対抗した軍事目的であることを隠そうともしなかった。その背景には、ロシアのウクライナ侵略、米中対立激化等がある。中露が発射を黙認するため国連安保理が機能しないだろうとの読みがあったと見られる。
だが約10分後の6時40分頃、西海上に墜落した。墜落地点は、全羅北道群山市(チョンラプクト・グンサンシ)の於青島(オチョンド)西方約200キロの海上だった。北朝鮮が日本の海上保安庁と国際海事機関(IMO)に通報した1段目の推進体の落下予想区域(忠清南道大川港の南西最大300キロ)にも届かなかった。
北朝鮮は、日本と国際海事機関(IMO)に人工衛星を打ち上げると通報した予告期間の6月11日午前0時までに再打ち上げはできなかった。北朝鮮は、軍事偵察衛星の打ち上げに失敗した直後に「可能な限り早期に2回目の発射を断行する」と表明し、日米韓は予告期間中の再発射を酔わせたが、結局実行できなかった。それほど重大な欠陥があったということだろう。
■ 韓国軍、迅速に残骸を回収
韓国軍は、北朝鮮の宇宙発射体の打ち上げから約1時間40分後の午前8時5分頃、於青島の西200キロの海上に浮かんでいた1、2段目推進体の連結部と推定される円筒形の残骸を回収した。軍関係者は、「北朝鮮が日本の海上保安庁に打ち上げを通報した直後(29日)から、水上救難艦『統営艦』など艦艇を1段目推進体の落下予想海域に出動させて待機していた」と話した。
引き上げられた残骸の表面には、「点検門13(機構組立)」とハングルで赤くはっきりと書かれていた。外観上、2012年4月に回収した「銀河3号」の1段推進体の残骸(酸化剤タンク)と似ている。
韓国軍は、当該水域に1、2段推進体などがすべて墜落したとみて、追加の引き揚げ作業に力を入れている。推進体をすべて回収できれば、北朝鮮のICBM技術力解明の「スモーキングガン(決定的な証拠)」となる可能性があるからだ。
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