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サイテーな日本の賃金水準 住みにくくなる日本 その1

Japan In-depth / 2023年6月16日 18時0分

サイテーな日本の賃金水準 住みにくくなる日本 その1




林信吾(作家・ジャーナリスト)





林信吾の「西方見聞録」





【まとめ】





・最低賃金を時給1000円以上に引き上げない限り、貧困問題は解決の道筋さえ見えてこない。





・最低賃金は上昇傾向にあるが、物価上昇率がそれを上回っている。





・非正規雇用の人たちは実質賃金が目減りし「経済難民」化する傾向。





 





もしかすると来年の今頃には「三密」「マスク」「入国制限」等々が死語になっているのだろうか。新型コロナ禍による制限が解除され、急速に日常が戻りつつある。そして外国人観光客が大勢日本へ……となるはずだったのだが、そうそう都合よく事が運ぶものでもないようだ。





旅館業の人手不足が深刻化する一方で、5月の連休明けに報道されてところによれば、「時給1300円まで引き上げても人が集まらない」と嘆く声がしきりだとか。こうした経営側の嘆きにも、世論は結構冷ややかで、「旅館業の過酷な労働環境を思えば、時給1300円でも割が合わないだろう」と受け止める向きが少なくないようだ。





これも報道で知ったのだが、ある地方都市で、米国資本の量販店が進出してきたせいで、近隣の飲食店が一挙に深刻な人手不足に直面し、中には店をたたんだケースもあるという。その量販店のチェーンでは、新規出店に伴ってアルバイト従業員を募集したのだが、最初から時給が1500円支払われるということで、近隣の店から一斉に転職していってしまった、ということらしい。





私は新型コロナ禍の以前から、全国一律で最低賃金を時給1000円以上に引き上げない限り、わが国の貧困問題は解決の道筋さえ見えてこない、と主張してきた。





ただ、もともと不安定な非正規雇用の人たちにとっては、最低賃金でも仕事があるだけありがたい、と考えざるを得ないことも、また現実であった。したがって、えり好みしなければ仕事はある、と言い得る状況で、表向きの有効求人倍率以上に、潜在的な人手不足に悩む会社も少なくなかった。





私なども、特別な資格など持っていないし、社会的には高齢者と位置づけられる身だが、ハローワークのサイトやいわゆる転職サイトなどを見ると、結構条件にかなう求人がある。多くの場合、最低賃金だが。





ところが、新型コロナ禍で「パンデミックの功名」とでも言おうか、いわゆる在宅ワークが増えたり、仕事が減った個人事業主には助成金が支払われたりしたため、非正規雇用の賃金問題など後景化してしまったのである。





この結果、冒頭で述べたように新型コロナ禍による行動制限に終止符が打たれたが、今度はあらためて人を集めようにも賃金がネックになる、という事態となった。





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