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迷惑と懲罰のバランスについて 住みにくくなる日本 その5

Japan In-depth / 2023年7月1日 11時0分

迷惑と懲罰のバランスについて 住みにくくなる日本 その5




林信吾(作家・ジャーナリスト)





林信吾の「西方見聞録」





【まとめ】





・回転寿司運営会社が、少年を相手取り6700万円の損害賠償請求訴訟を提起。





・撮影し拡散した人物がペナルティを受けないのは納得いかない。





・ネットで過去の迷惑動画を漁ってさらす時間とエネルギーをこうした問題をなくすことに費やせないのか。





 





「ペロペロ動画事件」をご記憶の向きも多いだろう。





1月下旬、岐阜県内にある回転寿司チェーン「スシロー」の店舗内で、金髪の少年が、置いてある醤油差しや湯飲みを舐め回してから元に戻す、という動画が拡散され炎上した事件だ。





本連載でも事件直後に紹介したが、英国の新聞までが「スシ・テロリズム」として紹介し、いわばグローバルな騒ぎとなってしまった。





この件で運営会社が、少年を相手取って6700万円の損害賠償請求訴訟を提起していたことが、20日までに分かった。





やはり、こういうことになるか……報道に接して、まずはそう思ったが、矛盾した感想を抱かざるを得なかったことも事実である。





個人感情としては、問題の少年はネットで実名から住所まで晒され、その結果、高校も自主退学して「引きこもり」のようになってしまったと聞くので、すでに十二分と言えるまでの社会的制裁を受けているわけだから、さらに巨額の賠償金は、酷に過ぎないか、と思えた。





しかしながら、運営元である株式会社あきんどスシロー(以下スシロー)が、全店舗の醤油差しを交換せざるを得なくなった上に、一時は客足も遠のいて、巨額の損失を被ったことは事実であるし、なによりも、こうした迷惑行為は、





「単なる悪ふざけでは済まされない、れっきとした犯罪である」





ということを広く知らしめる、いわば一罰百戒の効果を求めたという意味では、よい処置であったとの評価も可能だろう。





ただ、現実の裁判においては、こうした損害賠償請求が満額認められるケースはむしろ稀で、複数の弁護士が見立てを開陳しているが、





「よく取れて2000万円程度、ことによると数百万円」





ということになるらしい。





職業柄、著述家や出版社が名誉毀損で訴えられた案件は割と熱心にフォローしてきた方だが、1000万円の請求に対して裁判所が認めた(支払いを命じた)のは500万円、などということも珍しくない。





また、一部に誤解されている向きもあるようだが、被告の支払い能力が考慮されるということも、現実にはごく稀である。裁判所の責務は、原告と被告の主張をともに吟味して、どちらにより正当性があるかを判断することで、





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