岸田首相「少子化対策」の真の狙いは? 住みにくくなる日本 その6
Japan In-depth / 2023年7月2日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・岸田内閣の少子化対策は、増税ではなく歳出改革等での財源確保が原則としている。
・しかし、児童手当が増えても給与の手取りが減る可能性がある。
・本当の狙いは増税で、少子化対策はその口実ではないか。
「異次元の少子化対策」が、いよいよ動き出した。
年頭会見において、岸田首相が、
「少子化対策は待ったなしの課題」
と語り、6月までに「将来的なこども予算倍増に向けた政策を体系的に取りまとめる」とした。一応はその言葉通り、6月13日に、児童手当の拡充や、出産費用、教育費用の負担軽減、といった方針が発表されたのである。
たしかに15歳未満の子供の数は、1980年から減少の一途をたどっており、これまでの少子化対策では解決できないことは明白となった。
岸田首相自身、2022年に生まれた子供の数が80万人を下回り、過去最少を更新し続けているとして、2030年までを少子化対策の「ラストチャンス」だと位置づけている。『俺はまだ本気出してないだけ』という漫画(青野春秋・著 小学館)のタイトルをつい思い浮かべてしまったが、これは余談。
今さらながらだが、少子高齢化の問題はわが国だけにとどまらず、大半の先進国が直面しており、その深刻さから「静かな非常時」と称されている。戦争や災害とは様相を異にするが、気づきにくい状況の中で危機が深まっている、という意味だ。
問題は、前述のような政策を現実のものとするためには、年額にして3兆5000億円ほどの財政負担が生じるとされるが、その財源については、年度末までに検討する、などと「先送り」してしまったことである。
財源が確保できるかどうか分からないのに、予算の大枠だけを示して「異次元」と胸を張られても……と思うが、ここで終わらないのが厄介なところだ。
普通に考えれば増税しかないのだろうが(消費税を1%上げると、2兆円強の税収増となる)、岸田内閣は、増税ではなく
「まず徹底した歳出改革等で(財源を)確保することを原則とする」
としている。
マスメディアが報じるところによれば、目下政府内では、財源のうちおよそ1兆円は、社会保障の歳出改革でまかなうことが検討されているという。
具体的には、後期高齢者の医療費原則2割負担、医薬品の自己負担増、介護保険の利用料2割負担の対象拡大、介護保険の給付やサービスの抑制……要は高齢者に負担を押しつけて、増税の代替手段としようというのだ。
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