岸田首相「少子化対策」の真の狙いは? 住みにくくなる日本 その6
Japan In-depth / 2023年7月2日 11時0分
唐突だが「へずまりゅう」という名前を聞いたことはおありだろうか。元迷惑系ユーチューバーと称され、過去にはスーパーで精算前の魚の切り身を食べてしまうなどの迷惑動画を上げたかどで逮捕・起訴され、現在も保護観察付き執行猶予中の身である。
その彼は今年4月、豊島区議会議員選挙に立候補し、
「高齢者に厳しい社会へ」
などと書いた選挙ポスターを掲げ、話題になった。具体的になにをどうするつもりなのか、選挙公報にも明確な政策は書かれておらず、JR池袋駅前での選挙演説で、
「ジジイ、ババアは若者に道をあけろ!」
などとわめきちらしただけであった。当然ながら、最下位で落選。
「落選したらSNSから引退する」
と息巻いていたが、こちらの「公約」もまったく守られていない。
こんな人に延々と付き合う気にもなれないので岸田首相に話を戻すが、もともと自民党にとって高齢者層は大票田であり、その支持を危うくしかねない政策は、言い出しにくいものであったはずだ。
しかしながら、今次は少子化対策という大義名分があるので、高齢者層も「孫子の世代のため」と言われれば反論はしにくい。発想こそ「へずまりゅう」レベルだが、老練な政治家だけに、それなりの手練手管は使えるようだ。どう考えても正々堂々たる政治家の態度ではないが。
たしかに、私自身を含めて高齢者と呼ばれる世代は、次世代のために、という言葉に弱い。少子化対策が功を奏するのであれば、高齢世代の負担増もやむを得ない、と考える人が出てきても不思議はないのだが、事はそこまで単純ではない。
参考にすべき例がひとつある。
かつては共産圏に属し、今はEU加盟国となっているハンガリーだが、この国もまた、出生率の低下に頭を悩ませていた。
2011年、この国の出生率は1.23にまで低下していた。日本の場合、前述のように過去最低を記録した2022年でも1.26である。
そこでハンガリー政府が打ち出した対策というのが、なかなかかすごかった。
たとえば、子供を3人産んだ家庭に対しては住宅ローンが免除され、4人産んだら所得税までが免除。その上、子育て世帯に対する無利子の貸付制度など、実効性のある対策を矢継ぎ早に打ち出したのである。理論上、3年ごとに子供を生めば税金を免除された上、政府から借りたお金も返さなくてよくなる。
なにしろその財政規模たるや、名目GDPの5%を超えていた。
わが国はと見てみると、2020年の時点で、子育て支援に対する公的支出の対GDP比は1.7%で、岸田内閣の「異次元の対策」では、これが倍増することになっているが、それでもハンガリーには及ばない。もちろん、総人口・経済規模ともにかなり異なるので、単純な比較はできないが。
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