岸田首相「少子化対策」の真の狙いは? 住みにくくなる日本 その6
Japan In-depth / 2023年7月2日 11時0分
問題はこうした対策の結果で、ハンガリーの出生率は2020年には1.56まで回復した。
これまた評価が難しいところではあるが、それこそ「異次元のさらに上を行く」と言えるまでの諸政策が実行されたにもかかわらず、人口の安定的維持=少子高齢化に歯止めをかけ得る、出生率2.0には達していないという冷厳な事実がある。
なおかつ、このように巨額の財政支出が、ハンガリー経済に暗い影を落としているのだ。
たとえば、前述のように子だくさんの家庭は住宅ローンを事実上負担しなくてよくなったことから、大きな家が飛ぶように売れ、その結果、不動産価格が高騰した。
しかも、共稼ぎ家庭や、いわゆるシングルマザーは税金をほぼ納めなくてよくなったため、プライマリーバランスが危うくなってきた。この場合、解決手段は赤字国債の発行しかなく、
「子育て世帯のための財政支出が、未来の納税者(=子供たち)に負担を押しつける」
というパラドクスが起きている。
最後に、わが国にもう一度話を戻すと、こうした「家計のバランス問題」は、遙かに深刻になる可能性が高い。と言うのは、たしかに岸田首相が公表した子育て支援策によれば、3人目の子供が生まれた場合、高校卒業まで児童手当が受け取れるなどの恩恵に浴せるが、その一方では、財源確保のために16歳から18歳までの家族控除を廃止する案が浮上しているらしい。
つまりは、児童手当が増えても給与の手取りが減ってしまう可能性があるわけで、これで「3人目を産もう」と決断する親がいるだろうか。
これ以上のことは、予定通りなら年末に発表される、財源についての具体的な政策を見てからでなければ早計に論じられないが、現状どう考えても、岸田首相の本当の狙いは増税で、少子化対策はその口実に使われているだけなのではないか、との疑いを捨てきれないのである。
(その1、その2、その3、その4、その5)
トップ写真:令和5年第9回経済財政諮問会議・第20回新しい資本主義実現会議の合同会議での岸田総理(2023年6月16日・総理大臣官邸) 出典:首相官邸
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