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生産性の引き上げ 高齢化が進むからこそ大事

Japan In-depth / 2023年7月2日 18時0分

さらに、働く者の技能そのものを高めるための企業の支出も必要になる。新しい機械装備であれ、新しいソフトウェアであれ、それを多くの働く者が使いこなせなければ意味がない。そして、研究開発を通じた技術革新もまた、これから生まれる新しい需要に対応した製品、サービスの生産のためには不可欠だ。


これまで日本企業は、これらの生産性を高めるための支出に、全体として必ずしも積極的ではなかったと言われている。機械設備、無形資産、人的資本、研究開発。いずれの分野においても、先進国の中で日本企業は消極的だったという評価が多い。にもかかわらず、生産性の改善が欧州主要国に見劣りしていないというのは、日本の働く者がいかに頑張ってきたかを示しているのかもしれない。


 


■労働移動とスタートアップ


財務省の財務総合政策研究所は、昨年から今年にかけて「生産性・所得・付加価値に関する研究会」を主催し、先般、その報告書を取りまとめた。様々な研究者の多角的な議論から、今後、どうしたら日本で働く者の生産性を高めていけるかについて、色々なヒントを得ることができる。


その中に、日本も含め、主要先進国のこれまでの労働生産性の改善は、主として同一産業内で起こっており、必ずしもより生産性への高い産業へ労働が移動することによってもたらされたものではないとの分析がある。さらに、個々の企業に着目しても、これまでは企業内での生産性改善が主たるもので、企業を超えて生産要素が再配分されたことで全体の生産性が改善した部分は大きくなかったとしている。


もしそうだとすれば、より柔軟に働きを変えることができるような労働市場の整備が、さらなる生産性の引き上げに貢献するだろう。これまでの日本の労働者の多くは、働く場所を変えることや、働く内容を変えることに、保守的だったかもしれない。年齢が上がってくればなおさらそうだ。しかし、それこそAIの発達や学びの機会の拡大により、これまでよりは労働移動が容易になっていくはずだ。若い人々の間で次第に転職が普通のことになってきているのも、産業や企業を超えて、より高い生産性を実現できる分野に雇用を集めていくことができる可能性を示唆している。


さらに、何も既存分野だけが選択肢ではない。今日、20年前にはなかった製品、サービスが大きなマーケットになっている。GAFAMと呼ばれるICT企業の巨人たちは、みな米国生まれだが、その隆盛もこの20年くらいのことだ。20年後に最先端で活動している企業は、今まさに生まれているのかもしれない。成功と失敗は、かなりの部分、確率に支配されるが、その不確実性を乗り越えて、新しい分野に人材を集めることも重要だ。


その観点からは、これも最近良く話題となるスタートアップの充実もこれからの生産性改善には不可欠だ。挑戦と失敗の繰り返しの中で、初めて次世代を担う先端的な企業の成功が生まれる。そうしたダイナミズムを受け入れる経済にしていくことも、これからの本格的な高齢化の中で貧しい国にならないため、生産性の向上が求められる日本にとって、まさに必要なことだ。


トップ写真:イメージ 出典:Motortion/Getty images


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