リベラルメディアが報じないアメリカの出来事
Japan In-depth / 2023年7月13日 11時36分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・民主党リベラル派の過激な政策に国民中間層多数派がノーをつきつけた。
・トランプ前大統領の「ロシア疑惑」が虚構だったとの認定が下院本会議で確認。
・共和党側が優位に立ったことを日本の新聞、テレビは報道しない。
アメリカの政治が躍動的である。民主党のリベラル派がバイデン政権を動かして、国政での傾きをさらに左方向へ、左方向へ、とプッシュしてきた流れに、大きなストップがかかったのだ。このストップは保守派、というよりはアメリカ国民の中間層の多数派からの左系の過激な政策へのノーだといえる。
具体的にはアメリカ連邦最高裁判所がこの6月に下した二つの判決である。この両判決の重みは歴史的とさえいえる。とくに重大なのはアメリカの有名大学が長年、実施してきた入学生の選抜で黒人だけを優先する「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」を憲法違反と断じた判決だった。
もう一つはバイデン大統領が出していた学生ローンの返済を免除するという措置を無効だとした判決である。学生の授業料などのために公的資金を使って貸し出しをしてきた巨額のローンの多くの部分を返さなくてもよい、とする大統領命令だった。最高裁はこの措置も議会の承認が必要だとする見解を示したのだ。
日本のほとんどのメディアはこの二つの判決を単に「保守寄り」とか「国民の不信、深刻」という表現で不当な判断であるかのように報じている。だがこの両案件とも、そもそもリベラル派が強引にプッシュした動きであり、その措置に反対するアメリカ国民も多かったのだ。だから今回の最高裁の判決は、少数の保守派が国全体を不当に特定方向へ動かす、というような動きではないのである。常識の復活、あるいは理性の復元とさえ呼べるのだ。
だが日本のメディアは決してそんなふうには報じない。リベラル派の政策や主張が正しく、それを是正する保守派の動きは、好ましくない、民主主義にも反すると断じるような傾向なのだ。日本のメディアでのこの傾向は明らかにアメリカの主要メディアの偏向の影響だといえる。
日本の大手メディアが依存する米側のニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNテレビなどはみな明確な民主党支持なのだ。だから保守対リベラルという政策の対立でも、ほとんどの場合、リベラル派を支持して、その政策こそがアメリカ国民全体の意思であるかのように報道する。保守的な政策はいかにも少数派だけが支持する異端であるかのように描写する。
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