「中台戦争2027」(上)ロシア・ウクライナ戦争の影で その1
Japan In-depth / 2023年7月25日 11時0分
ちなみに、このクラスター爆弾については、英国やカナダなど複数の同盟国が懸念を示していた。前述のように多数の子爆弾をばらまくのだが、その子爆弾の不発率が意外に高く(最大30%近いとのデータまである)、地雷と同様に、戦闘が終結した後までも民間人の脅威になり得るのだ。
このため、日本を含む世界100カ国以上が使用禁止条約を締結しているが、米ロとウクライナは、いずれも批准していない。
つまり、一部で言われるような「ロシアの崩壊は時間の問題」といった見方に安易に与する気にはなれない。プーチン大統領の身になにかが起きるとか、突発的な事態はもちろん考えられるし、それ以上に「核の脅威」は依然として残されているのだが。
一方で、台湾海峡では中国による軍事的挑発が繰り返され、緊張が高まっている。
中国の習近平国家主席が、台湾海峡の正面に布陣する東部軍管区の施設を訪問し、
「戦争に備えよ」
などと訓示したことも大きく報じられた(7月6日)。
もともと昨年2月末にウクライナで戦端が開かれた当初から、
「次は中国による台湾侵攻ではないか」
といったことが取り沙汰されてきた。
これにもっとも敏感に反応したのは、言うまでもなく台湾で、蔡英文総統は昨年12月27日、18歳以上の男子に課している兵役を、現在の4ヶ月から1年に延長すると決定した。実施は来年からで、2005年1月1日以降に生まれた男子が対象になる。
ひとつ間違えば多数の人命が失われる事柄なので、競馬の予想屋じみた話をするのは気が進まないのだが、ロシアによるウクライナ侵攻との関係で見るならば、中国が台湾に侵攻するという事態は、むしろひとまず遠のいた可能性があると思う。
今さら「たら、れば」を持ち出すのも、やはり気が進まないが、もしもロシアが電撃戦を成功させ、4日間でキーウを占領し、ウクライナのゼレンスキー政権を打倒していたならば、中国共産党の情勢判断にも大きな影響を与えただろう。
ちょうど第二次世界大戦の初期に、ナチス・ドイツ軍が電撃戦でポーランドやフランスを席巻したことを知った旧日本陸軍が、
「バスに乗り遅れてはならない」
などと言って政府を突き上げ、日独伊三国同盟の締結に動いたように。
しかしながら、ウクライナでの戦役をめぐって現実に起きたのは、軍民あげての激しい抵抗に加え、米国などから供与された兵器のおかげで電撃戦は頓挫し、その後は戦争の泥沼化によってロシア経済が疲弊する一方、という事態であった。
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