ワグネルとイスラム国(上)ロシア・ウクライナ戦争の影で その4
Japan In-depth / 2023年7月29日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・6月23日に起きた準軍事組織「ワグネル」の反乱。
・ワグネルは2014年、エフゲニー・プリコジン氏らが設立した民間軍事会社。
・「ワグネルは特定のイデオロギーのために戦っているのではなく、単に利権のため」との見方。
ロシアによるウクライナ侵攻から500日余り。
シリーズの冒頭でも述べたが、ウクライナ軍による反転攻勢が始まるや、これはロシアの「終わりの始まり」だと見る向きが、日を追って増えてきている。
その象徴的な事案が、6月23日に起きた準軍事組織「ワグネル」の反乱であった。
この反乱は、48時間を経ずして収束したのだが、そもそもワグネルとはいかなる組織で、なぜ反乱を起こすに至ったのか、まずは基礎知識を得ないと、現在のロシア=プーチン政権が直面している危機の本質を理解することはできないだろう。
ワグネルは2014年、エフゲニー・プリコジン氏らが設立した民間軍事会社で、名称は19世紀ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーに由来すると言われている。ワグナーのロシア語読みがワグネルなのだ。
プリコジン氏は1961年生まれ。10代後半から20歳になる頃までは、ロシア・マフィアの正式な構成員ではなかったが、恐喝・詐欺・傷害などの犯罪に手を染め、懲役12年に処せられた前科まである(実際に服役したのは1981年から90年まで)。今の日本で言えば「半グレ」のような存在だったと言える。
しかし、これまた日本の半グレと妙に符合するのだが、ソ連崩壊後の混乱期にビジネスの世界に飛び込み、外食産業で財をなした。世に言うオルガニヒ(ロシアの新興富裕層)に名を連ね、プーチン大統領からも厚い信頼を得たという。
「かつてはプーチン大統領のシェフであった」
との報道もあったので、北朝鮮にいた「金正日の料理人」みたいな人(近年お見かけしないが、息災だろうか)を連想した向きもあったようだが、そういうことではない。取り巻きの一人として、プーチン大統領が主催するパーティーのケータリングなどを請け負っていたことから広まった呼び名だ。
例によって余談にわたるが、権力者のお抱えシェフというのは、家族ぐるみで一緒に過ごす時間が長い上に、極端なことを言えば、毒殺しようと思えば容易にできるので、よほど信頼を得た人物しか選ばれない。推測だが、こうした知識と実際の経緯が混同され、誤解を招いたのかも知れない。
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