経済のダイナミズムを失わせない金融政策 ~経済の構造変化が進む中にあっても金利の上下変動はあった方が良い~
Japan In-depth / 2023年8月1日 23時0分
当時の日本経済の状況はどうだったか。内閣府が発表している景気基準日付の景気の山谷で振り返ってみると、1999年1月を景気の谷として、日本経済はもう1年以上拡大局面にあった。その次の山は2000年11月だった。景気の谷と山の中間で金融政策を中立化するのだとすれば、2000年8月の時点での政策変更はむしろ慎重であったとさえ言えるかもしれない。それも中立と言える政策金利が0.25%としてのことである。
さらに時代は下って、2006年3月に日本銀行は量的緩和を停止した。そして7月には、再びゼロ金利を解除し、政策金利の誘導目標を0.25%とした。福井総裁の頃のことだ。当時も、景気は2002年1月を谷として、日本経済はすでに4年以上拡大局面にあった。次の山は2008年2月なので、これもまた折り返し時点としてはやや後ずれしていたとも言える。
この時も拙速だとの評価が出た。当時の感覚からすれば、日本経済は実力を十分に発揮しておらず、まだまだ金融政策を中立に戻す時期ではないと受け止めていた人がいても不思議ではない。しかし、今から振り返れば、景気循環に沿って金利もまた上下するというダイナミズムを保つためには、この時点でゼロ金利を解除するという判断も十分に合理的であったように思う。
拙速の誤りを繰り返さない。景気循環の中で金利を上下させ経済のダイナミズムを失わせない。どちらの立論が正しいか、客観的な正解はない。しかし、なかなか実現できないことができるようになるまで、ずっとスタンスを変えないという金融政策が、金融市場ひいては日本経済の元気を失わせているという感覚も、今となってはあるのではないだろうか。
■ 不況期にこそイノベーションが生まれる
恥ずかしながら原著に当たったことはないが、これまでに自分が学んだジョセフ・シュンペーターの景気循環の考え方によれば、不況期にこそ次の好況期の種がまかれる。そもそも景気の後退は、新たに生まれたイノベーションがビジネス・モデルとして具体化し、それが経済に行き渡るところで起こるという整理であったと理解している。
人口動態、新興経済の勃興、情報通信革命の急展開。それら日本経済に大きな構造変化を迫る力が波状的に押し寄せる中で、日本経済は、ちょっと総需要ショックが入るとすぐにマイルドなデフレに陥ってしまった。そういうことを繰り返す中で、経済が不振だという感覚をなかなか拭えずにきた。
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