メジャーリーグで再生を果たした藤浪晋太郎から日本社会が学ぶべきこと
Japan In-depth / 2023年8月9日 17時0分
以上、日米球界の差について書いてきましたが、日本の野球界も、選手を活かすということについて変化の兆しが見えてきます。
端的な例は、始まったばかりの「現役ドラフト」です。
実力がありながら燻っている選手を、各球団がリストアップしてドラフト制度のように移籍させるのですね。野球ファンならご存知の通り、阪神の大竹投手、中日の細川選手などが新たな球団において、チームの中心選手として水を得た魚のように大活躍しています。
▲表 出所:バスターエンドラン 『【プロ野球】現役ドラフトとは?仕組み・ルールをわかりやすく解説! | バスターエンドラン』
日本のスポーツ界においては、旧いしきたりなどが多かったプロ野球ですが、Jリーグなどの影響もあるのか、「シーズン中の移籍」も活発化しています。
さて、話を少し大きく、視座を少し高くして、上記の示唆から、人財育成に関して日本社会全体、特に企業社会が学べることはないのでしょうか?
それを述べる前に、アスレチックスの事情も押さえておきましょう。
藤浪を買ったアスレチックスは、「マネーボール」(マネー・ボール - Wikipedia)という書籍で紹介された有名球団です。「マネーボール」に描かれた統計解析によって選手の潜在力を計り、安く他球団に対抗するノウハウや考え方は、既に世界中のスポーツクラブ、特にメジャーでは吸収し尽くされ、メジャーではそれよりも数段上のイノベーションの時代になっています。20年以上経ってもアスレチックスが、基本的に資金力が豊かではないことは変わらず、一度買った経営資源であり「資本」である藤浪について、目論見通りの活躍をしなくても下部リーグに降格させず何とか再生して「資本の価値向上」することに躍起だったわけです。
日本企業においても、現在従業員について「人的資本」と捉え、人的資本に対して育成を積極的に行うなど、価値の向上、即ち能力向上を図ることが推奨され、上場企業の場合は「人的資本可視化」が今年度から義務化されました。今後、企業は人財育成を積極的に行い、経営改革を進めていくことが求められることになりました。
筆者の全くの想像ですが、アスレチックスの今春の思惑としては、メジャーの観点では、「とにかく藤浪は『安い』。少しでも改善できれば、他球団に移籍させ稼ぐことが出来るはずだ、投資リスクは低い」と考えたのではないでしょうか?
そういう欧米のビジネスライクな考え方に眉を顰める日本人は多いかもしれませんが、きちんと「人的資本」と認識して、育成には責任を持つということが、実際には選手(企業であれば従業員)の幸せに繋がるのです。
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