平成22年の年賀状「明治の日本、戦後高度成長の日本」・「場所と私、人生の時の流れ、思いがけない喜び」・「紅茶と結石と年賀状」
Japan In-depth / 2023年8月16日 23時0分
ただし、こう付け加えることを忘れなかった。
「このままの状態で石が腎臓にある間は大丈夫です。でも、それが落ちてくると尿路につまることがあります。するとひどく痛くなることがあります。七転八倒という言葉そのままの痛みのこともあります。体外に排出される際には、いずれにしてもひどく痛むことがあります」という、はなはだ有難くない診断を頂戴したのだ。主治医はさらに、「紅茶を飲むのでしたら、ミルクティーにしてくださいね。それなら、身体のなかのカルシウムと結合する前に、カップのなかで紅茶のシュウ酸とミルクのカルシウムが結合してくれますから。」と続けた。
決定的な宣告だった。私はストレート・ティーと涙ながらのお別れをして、ミルクティーに宗旨替えをした。しかし、それはほとんど紅茶を愉しむ時間を喪失したに近いものだった。以来、私は紅茶を飲みはしても愉しむことはなくなってしまった。人生の伴侶が失われたも同然だった。
紅茶の飲み過ぎ。思いだしてみれば何の不思議もない。かつて、毎日10杯以上の紅茶を飲んでいた日々が確かに存在していた。江藤淳の『夜の紅茶』を読んで以来の紅茶好きである。1972年に出たその本にあった『夜の紅茶』というエッセイに惹かれて以来の喫茶の習慣だから、22歳の時からということになる。この本のことは平成28年の年賀状で触れている。65歳の私が書いた年賀状である。それによれば、8年前、私はストレートの紅茶を愛飲していたということのようだ。なぜなら、翌年の年賀状には、紅茶について「二口目からは牛乳を入れるようになりました。腎結石ができないようにです。」と書いてあるからだ。「もはや、あのストレートティーの香りを満喫することはありません。」となんとも恨めし気である。そういえば、或る会社の社外監査役をしていたときのこと、会議が一段落するとコーヒーを出して下さるのだが、その時に牛乳を付けてくださるように社長室の女性にお願いしたことがあった。お願いをしたのはきっとこのころのことなのだろう。あの、植物性の牛乳もどきではダメだと主治医に聞いていたからである。
そうやって7年間、私なりに気をつけていたのだが腎臓の結石は少しずつ本人の意図に反して直径6.7ミリになるほどたくましく成長し、7年も経って生まれ故郷の腎臓に別れを告げて独り旅立ち、この4月、めでたく尿路に落ちてきたということである。
たまたま書いてきた年賀状の記載から、いつ腎臓に結石があるとわかったのかをはっきりと知ることができたということである。私は、医師に注意されてからは直ちに注意深く暮らしてきたのである。だが、我が身には我が心の思いは通じなかったということである。
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