ロシア、85年前の武力衝突で日本非難 制裁の報復か、北方領土でけん制も
Japan In-depth / 2023年8月17日 23時0分
張鼓峰事件と北方領土返還要求に何の関係があるのか理解に苦しむが、戦争末期のヤルタ協定(1945年2月)などをよりどころとしているようだ。
米英ソ3国指導者によるこの取り決めは「樺太(サハリン)南部、これに隣接する諸島はソ連に返還される」「千島列島はソ連に引き渡される」などと明記されている。
しかし、「千島列島」がウルップ島以北を指し、択捉、国後、歯舞、色丹の南千島4島が、それに含まれないことは日魯通好条約(1855年)、千島樺太交換条約(1875年)から明らかであって、どこにも引き渡されるべきものではないことは自明の理だ。
そもそも、北方4島を「第2次大戦の結果」、つまり〝戦利品〟というなら、むしろロシアこそ「ポツダム宣言」(45年7月) に違反するという批判を免れないだろう。同宣言は、「領土拡張」を否定した「カイロ宣言」(1943年11月)を援用しているからだ。
■責められるべきはシベリア抑留の蛮行
そもそも、日本固有の領土である北方4島をロシアが「自国領土」だと主張するのは、1945年(昭和20年)8月15日の日本の降伏後に、どさくさにまぎれて不法占拠したためにほかならない。
ソ連軍は、8月18日ー31日、8月28日ー9月5日の両期間にそれぞれ、ウルップ島以北、北方4島を占領、その状態のまま今日までの長きにわたって居座りを続けている。
終戦直前の8月9日、ソ連はまだ有効だった日ソ中立条約を無視して旧満州に攻め込んだ。わずか一週間の戦闘で、戦勝国を自任、日本軍将兵の復員を認めたポツダム宣言(1945年7月)に違反して約60万人をシベリアで重労働に従事させ、5万8000人を死に追いやった。悪魔の所業ともいうべき蛮行はきびしく追及されなければなるまい。
北方領土をめぐるロシアの主張がいかに不当か理解できようが、それについて述べるべきことは枚挙にいとまがない。
■抗議見送れば不当な主張認めることに
真相不明の過去の武力行使を持ち出して、現在の岸田内閣の外交政策を批判、領土問題でけん制すること自体、不当を通り越して噴飯ものというべきだろうが、不可解なのは日本政府の対応だ。
外務省は、ロシアの声明はもちろん把握しながら、先方への抗議などは一切控えている。
「根拠のない主張にいちいち反論しては際限がない」(外務省ロシア課幹部)、「反論すれば、むしろ先方の主張を際立たせる」(ロシア専門家の元外務省高官)などというのがその理由だ。
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