「8月の平和論」の危険性
Japan In-depth / 2023年8月17日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・「8月の平和論」は自衛の行動さえも戦争の否定として禁じる。
・平和の内容を論じず、単に平和を戦争や軍事衝突のない状態としてしかみていない。
・どの国家も自国を守るため、最悪の場合、武力という手段にも頼る、という基本姿勢を揺るがせにしていない。
例年の「8月の平和論」の季節も15日の終戦の日で、また幕を閉じた。
「8月の平和論」とは毎年、8月になると、6日の広島での原爆被災、9日の長崎での同様の被災、さらに15日のポツダム宣言受諾による敗戦と、戦争の惨禍とその終結を記念する式典を中心にして、「平和の絶対の大切さ」が繰り返し語られ、叫ばれることを指す。その基本メッセージは「どんな場合でも平和を守り、戦争は絶対に拒否する」という趣旨である。そんな趣旨は小学生の子供たちまでが語らされている。
戦争の惨禍を想起し、その渦中で命を失った先人の霊を追悼することは、国家として、また国民として欠かせない。だがその際に日本の国のあり方として語られる「平和」や「戦争」についての主張は日本の国の安全保障を麻痺させる危険があるといえる。
私はいまアメリカの首都ワシントンにいて、日本の8月の平和論や戦争否定論について考えている。アメリカでは日本との戦争の終結記念日は公式には9月2日、つまり戦艦ミズーリ号艦上で日本政府の代表が降伏文書にサインした日とされている。だが実際に戦争が終わった日はアメリカ時間では8月14日であり、この日も対日戦争勝利の日として祝われる。
実際の歴史でもアメリカでは1945年8月14日に日本との戦争に完全に勝利し、日本を全面降伏させたとして全国が大祝いとなった。勝者と敗者、日本とは正反対の反応だったのは当然である。そのアメリカの祝賀では日本との戦争はアメリカの防衛、自由世界への脅威の除去として大歓迎された。自衛のための戦争こそが自由や繁栄、さらに平和をもたらしたという当然の認識である。だからアメリカではすべての戦争を否定するという主張は皆無だといえる。
一方、日本での「8月の平和論」はすべての戦争を否定する。戦争とは一般に主権国家同士の武力の衝突である。日本がもし外国から侵略を受けた場合、どうするのか。「8月の平和論」に従えば、一切、軍事力での抵抗や防衛はしてはならないことになる。つまりは外敵への降伏である。
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