8月15日に戦争は終わらなかった 日本と世界の夏休み その5
Japan In-depth / 2023年8月20日 19時26分
このあたりの経緯はやや複雑だが、基礎的な知識だけなら『日本のいちばん長い日』という映画を通じて得ることができるだろう。同タイトルの原作(半藤一利・著 文春文庫)を読むと、もっとよいが。
ここでもうひとつの論点、すなわち1945年8月15日をもって、当時の日本人が戦争の惨禍や恐怖から解放されたわけではない、とはどういうことか見てみよう。
8月9日、日ソ中立条約を一歩的に破棄したソ連邦は、満州(中国東北部)、朝鮮半島、さらには当時に本領だった南樺太(サハリン島南部)に一斉に侵攻。
この軍事行動は9月2日まで終熄しなかった。その理由は前述の通り「ポツダム宣言受諾=無条件降伏」ではなかったからだが、いずれにせよその間に、ソ連兵による略奪やレイプなどの被害は甚大なもので、さらには57万500人の日本人が抑留され、シベリアやモンゴルの収容所で強制労働に従事させられたのである。
昨年暮れに『ラーゲリより愛を込めて』という映画が公開され、話題となった。原作は1989年に刊行された『収容所〈ラーゲリ〉から来た遺書』(辺見じゅん・著 文春文庫他)というノンフィクションで、主人公は実在の人物だが、他の抑留者は映画のオリジナル・キャラクターで、原作には登場しない。
いずれにせよ主人公・山本幡夫を演じた二宮和也(嵐のニノである。念のため)はじめ、北川景子、松坂桃李、桐谷健太という気鋭の役者たちが、鬼気迫るまでの名演技を見せてくれたのだが、収容所生活の描き方については、いささか甘いのではないか、と思わざるを得なかった。
冬期は氷点下40度にもなるという酷寒の中、食事は一日一食、黒パンと食塩水みたいな薄いスープだけ。そして重労働。そのような「シベリア三重苦」とまで称された環境下、5万7000人もの人が命を落としたのである。
主人公はと言えば、いかに過酷な環境にあろうとも、生きて家族のもとへ帰る、という希望を抱き続けて、周囲の人たちを励まし続けるのだが、あろうことかガンに冒されてしまう。
病床で遺書を書くのだが、日本語でなにかを書きとどめ、それを持ち帰ることは「スパイ行為」に当たるとされた。そこで仲間たちは手分けして遺書を暗記し、帰国後それを文字に起こした手紙を持参して、入れ替わり立ち替わり遺族のもとを訪れる。
ここがクライマックスなのだが、中でも、漁に出ていたところを捕らえられてラーゲリに送られたが、学校に行っていないため、主人公から初めて読み書きを教えてもらったという青年(中島健人)が、長男とこんなやりとりをするシーンが圧巻だった。
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