福島県相馬野馬追、地域力の強さを象徴
Japan In-depth / 2023年8月24日 11時20分
上昌広(医療ガバナンス研究所理事長)
「上昌広と福島県浜通り便り」
【まとめ】
・福島県相馬野馬追に県関係者が招待されないのは、相馬の歴史を反映。
・福島は明治政府が作り上げ、内務省が仕切った国と県の組織と、市町村は全く別もの。
・地方の活性化は喫緊の課題。野馬追は日本の地域力の強さを象徴している。
7月29日〜30日、福島県相馬地方で開催された野馬追(のまおい)を見学してきた。東日本大震災から13年連続13回目の見学だ。戦国時代の鎧兜をまとった約370騎の騎馬武者が街中を行進し(御行列)、南相馬市内の雲雀ヶ丘祭場では、鎧兜を着けたままで競馬(甲冑競馬)や、打ち上げられた神旗を奪い合う騎馬戦(神旗争奪戦)を繰り広げる。
一度でも見学すると、その迫力に圧倒される。ハリウッド映画顔負けの一大スペクタルを、地方都市が単独で提供するなど、私は相馬以外では知らない。
野馬追は相馬の歴史を反映している。今年の野馬追には、大学時代の剣道部の一年後輩で、総務省大臣官房審議官を務める中井幹晴氏を誘った。勇壮な騎馬武者姿に衝撃を受けたそうだが、彼の官僚らしいコメントが興味深かった。
彼と私は、土曜日に相馬市が主催した前夜祭に参加した。その場には西村康稔経済産業大臣など、多くの著名人が参加していた。ところが、中井氏によれば、「大臣や国会議員、さらに各地の市長は参加しているのに、知事はもちろん、県庁関係者はほとんどいない」というのだ。
内堀雅雄福島県知事は、中井氏の総務省の先輩だ。野馬追でお会いしたら、挨拶でもしようと考えていたのだろう。彼の予想は外れた。
▲写真)中井幹晴氏、南相馬市内の御行列を見学しているところ(執筆者提供)
私は13年間、野馬追に参加しているが、このことに気づいたのは初めてだ。ただ、中井氏の発言は、相馬という土地の特徴を端的に言い表している。なぜ、福島県庁関係者が野馬追に招待されないのか。これこそ、相馬の歴史を反映しているといっていい。本稿で論じたい。
相馬の歴史は苦労の連続だった。戦国時代、相馬家は伊達家と抗争を繰り広げた。伊達家は60万石を誇る強大な大名だ。その武力は相馬家(6万石)とは比較にならない。伊達家に周囲の小大名は全て滅ぼされた。独立を保ったのは相馬家だけだ。相馬家は生き残りに懸命だった。彼らは、軍事力を強化せざるを得なかった。最終的に、伊達氏とは通算30回以上も戦い、その軍門に下らなかった。
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