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ワクチンで予防できる帯状疱疹

Japan In-depth / 2023年9月6日 11時0分

ワクチンで予防できる帯状疱疹




濱木珠惠(医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック新宿院長)





【まとめ】





・水痘ウイルスが潜伏状態から再活性化し、帯状疱疹を発症する。





・帯状疱疹ワクチン接種者の認知症リスクが非接種者と比べ約20%低下。





・2018年に承認されたワクチン『シングリックス』は、帯状疱疹の発症率90−95%減少させる。





 





読者の皆さんは「水痘」にかかったことはあるだろうか。いわゆる「水ぼうそう」である。数日かけて全身に発疹が出て、それが水ぶくれになっていく。熱は出ることもあれば出ないこともあり、だいたい7日程度で改善していく。水痘にかかったことがあれば、抗体ができて二度とかかることはないと聞いたことがあるかもしれない。





だが実は、水痘のウイルスは、神経に潜伏感染しているので駆除はできていない。脊髄の神経節に潜伏しているのだ。同じウイルスが、初めて感染した時には水痘として発症し、明確な原因はないが、高齢者だったり、若くても疲労や病気で体調を崩したりすると、水痘ウイルスが潜伏状態から再活性化しやすくなり、帯状疱疹を発症する。症状としては、痛みや痒みを伴う水疱が知覚神経の支配域に沿って帯状に出現する。





最近の研究では、この帯状疱疹の予防ワクチンと認知症予防効果との関連性も示唆されている。2023年6月に英国の『ネイチャー』誌に、このウイルスと認知症の関係性を示唆する論文が掲載された。英国のウェールズ地方の約30万人の健康記録を調査したところ、帯状疱疹ワクチン接種者の認知症リスクが、非接種者と比べて約20%低下していたのだという。





アルツハイマー病の発症には、アミロイドβの関連が知られているが、それ以外に、ヘルペスウイルス属の慢性感染が関与することがわかっている。帯状疱疹を引き起こす水痘ウイルスはその一つだ。帯状疱疹ワクチンでこのようなウイルスの増殖を抑制すれば、アルツハイマー病の発症の予防効果が得られるのかもしれない。まだ検証がされていない話ではあるが、幼少期に感染した水痘ウイルスのせいで認知症に影響するかもしれないと言われるとちょっとそら恐ろしい気もする。それが帯状疱疹ワクチンで予防できるかもと言われたら、帯状疱疹と認知症の予防、一石二鳥で接種しようという人は増えそうだ。





ここで少し、帯状疱疹のことを具体的に紹介したい。





先日、午前の診療の合間に、勤務中の40代のナースが診察を求めてきた。ここ2、3日、頭痛がある、特に右耳の後ろが腫れ、痛くてしかたがないのだという。中耳炎か、はたまた耳掃除などで外耳炎を起こしたのだろうか。だが診察してみると、確かに耳の後ろ側の頭部の皮膚は少し腫れぼったいし、耳の下のリンパ節が腫れているのだが、耳そのものに目立った赤みや腫れ感はない。耳にも周辺にも発疹もなかった。耳の中にも目立った傷や滲出液はなかった。鼓膜にもこれといった異常は確認できず、聴力の低下や耳鳴りなどの症状もなかった。それでも耳介に触れると痛いという。彼女と一緒に首を傾げながら、外耳炎で腫れている可能性を考え、念のため鎮痛剤と点鼻薬を処方して様子を見ることにした。夕方、日勤業務を終えて帰ったはずの彼女が、更衣室から戻ってきた。





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