ラマスワミ米大統領候補が注目される理由
Japan In-depth / 2023年9月26日 11時3分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・ラマスワミが共和党予備選躍進。党員対象世論調査でトランプ、デサンティスに次ぐ3番手に。
・反ESG、反ウォーク、反脱炭素原理主義の立場で発信力を武器に台頭。
・ポリコレを気にしないラマスワミの言動と彼に対する反応はアメリカを知る上で貴重。
ビベック・ラマスワミ(38)が、たぐいまれな発信力を武器に、進行中の共和党予備選で一躍注目を集める存在となっている。共和党員を対象とした主要世論調査・全国平均で、このところトランプ前大統領、デサンティス・フロリダ州知事に次ぐ3番手の位置を維持している。
今年2月に大統領選への出馬を表明した時点ではほぼ無名の存在だった。ここまで支持を伸ばしたのは、一(いつ)に掛かって口頭での発信力である。
完璧な滑舌で、機関銃のように単純明快な保守的立場を打ち出す。何を突然聞かれても決して言い淀むことがなく、細々と但書を付けることもない。
他の共和党候補の陣営からは、「彼の発言は保守派の決め台詞を並べただけで、政策以前の意見に過ぎない。あそこまで割り切った言い方ができるのは政治家ではないからだ」「まず出身地であるオハイオ州なりどこなりかの知事や市長でも務めて、政治家としての実績を上げてから大統領に挑戦すべきだ。まだ早い」といった批判の声が上がる。
確かに政治的手腕は未知数だが、「アメリカ草の根保守の本音」が鮮明に窺える点で、日本においても、その発言内容をしっかり分析すべき存在である。
ラマスワミは、インドからアメリカに移民した両親のもとに生まれた。神の実在を強調するが、クリスチャンではなく、アメリカでは少数派に属するヒンズー教徒である。ハーバード大学で特に生物学を学んだあと、イェール大学法科大学院を修了した。その後、投資会社やバイオテクノロジー会社を起業して成功を収め、かなりの財を成している。日本のソフトバンクと事業提携したこともある。
2022年、今はやりのESG(環境・社会・ガバナンス)やウォーク(woke 「意識高い系」ないしポリコレ)に基づく、左派に迎合した投資管理を批判し、反ESG、反ウォークを掲げる投資管理会社を立ち上げた。
国際的にリベラル派が主導し、日本政府や経済団体も右に倣えの態度を取るESG運動の代表的な旗は「気候変動」阻止すなわち脱炭素主義である。
ラマスワミはこの運動の欺瞞性を厳しく叩き、繰り返し次のように言う。
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