中国の金融不安に気づいた欧州
Japan In-depth / 2023年9月27日 7時0分
これに対し、バチカンの立場は一味も二味も違う。複雑な経緯を簡単にまとめるとこういうことらしい。
●バチカンは中華人民共和国建国後、司教任命権を巡って1951年に中国と断交し、欧州で唯一、台湾と外交関係を持っている。
●その後、バチカンと中国は交渉を続け、2018年には司教を「共同任命」する「暫定合意」が結ばれた。
●「暫定合意」は2020年10月と2022年10月にそれぞれ2年間延長された。
●「暫定合意」以前のバチカンは、中国公認教会が選んだ司教を原則として認めず、非公認でバチカンに忠誠を誓う地下教会の聖職者から司教を任命していた。
●「暫定合意」後は、従来は未承認だった中国独自の司教を容認し、公認教会の聖職者を新たに司教に任命している。
●台湾は、こうしたバチカンと中国の関係改善に警戒感を隠そうとしない。
このように、バチカンと中華人民共和国との関係は微妙である。今バチカンは公式には「台湾(中華民国)」と「外交関係」を結んでいるからだ。しかし、この点、バチカンの動きは慎重かつ、外交的に見ても極めて興味深い。それにしても、バチカンは何故かくも外交巧者なのか?
こちらへ来て理由が分かった。あるカトリックの大司教が1436年にまとめた「大使ハンドブック」という書物があるそうだ。そこにはカトリックの経験主義的原則として「勝者も敗者も作らない、紛争には中立を貫く、党派的行動を避ける、相手を選ばず対話する、慈善活動に従事する」ことと書いてあるらしい。バチカンは今もこの諸原則を忠実に守っているのだろう。
確かに、これらの諸原則は今も有効だ。15世紀に書かれたこの書物には既に「通行の自由、免税特権、身体不可侵」などの外交的概念の萌芽があるという。要するに、バチカンは実は「外交の先進国」なのだ。今回のウクライナ戦争は東方正教会の領域だが、バチカンの外交的智慧を過小評価してはならないと思った次第である。
出張中でもあり、今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真:一般謁見に臨む教皇フランシスコ 2023年9月20日バチカン市国サン・ピエトロ広場
出典:Photo by Vatican Media via Vatican Pool/Getty Images
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