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失われゆく天・地・人の恵み ~より高いコストに備えなくてはいけない日本経済 ~

Japan In-depth / 2023年10月4日 17時0分

 


■ 人口が減る中での問題解決


以上のような問題の解決を、日本は人口が減少していく中で図らなければならない。これまでにない難しい問題の解決を、より少ない人数でやっていくのだから、一人一人は一層忙しくなる。そうであるだけに、問題解決に取り組もうとする者のエンゲージメント、即ち、自分の努力に対して前向きな気持ちを持てることがますます大事になる。多くの者が、仕事だからと自らに言い聞かせ、気持ちの入らない努力を強いられていたのでは、人口が減る中で社会全体として必要な課題解決をすることはできないだろう。


さらに、マクロの経済環境の評価も変えていかなければならない。資源多消費型の経済活動は、地球環境の面からも評価できない。さらに、日本経済の中で付加価値の生産に従事する者の数が当面は減っていくのであるから、付加価値生産の総額やその伸び率を、過去との対比でみる意味合いは薄れていく。


加えて、社会保障関連以外の政府の歳出についても、人の数と相関するものは、やはり総額では考えられなくなるはずだ。他方、社会保障については、高齢化に伴い、一人当たり歳出が増加するので、制度の変更がない限り、総額は膨張せざるを得ない。だからと言って、世話になる若い人々の数が相対的に少なくなる中で、これまでと同じような社会サービスを高齢者一人ひとりが受けることができるだろうか。この点は社会全体で真剣に考えなくてはならない。


人口が減る経済では、大勢の力で問題を一挙に解決することは難しい。本当に困っている人がどこにいるのかをみつけ、個々の困り事に対応することがますます重要になる。幸いなことに、デジタル化、人工知能の進歩は、その本当の困り人、困り事をみつけ易くしてくれる。人口は減るが、その一人ひとりが享受できる技術の水準は、かつて人類が経験したことがないほど高いのだ。


 


■ これまでの天・地・人の恵みが薄れても幸せな日本に


以上のように、これからの日本経済はこれまでのようには天・地・人の恵みを享受することができなそうだ。しかし、それに文句を言っても始まらない。現在の私達の生活環境は、例えば80年前と比べれば、はるかに恵まれている。それに感謝しつつ、今後、解決すべき課題から目を逸らさず、少しでも多くの者がその解決にエンゲージできれば、新しい幸せを感じる社会が訪れると期待したい。


そのような社会の価値観の変化は、決して容易なことではない。しかし、天・地・人の環境変化を冷静にみつめ、新しいビジョンを見出すことができれば、その中で、一人ひとりが充実した時間を過ごせることもできはしないだろうか。


私事になるが、「人の恵み」で思うことの一つに、先月亡くなられたジャーナリストの藤田正美さんとの出会いがある。藤田さんはこのJapan In-depthにも寄稿しておられたし、彼とお会いしなければ自分がこうして寄稿させて頂くこともなかった。随分と文章の書き方も教えて頂いたが、一向にうまくなっていない。それをお詫びしつつ、もうお会いできない寂しさとともに故人のご冥福をお祈りしている。


トップ写真:イメージ


出典:Skyimages / Getty Images


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