日本のサポーターよ、原点に戻れ(下)スポーツの秋2023 その6
Japan In-depth / 2023年10月4日 21時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・サッカーのサポーター、頻度と騒ぎの規模において、イングランドが図抜けてひどかった。
・フーリガンが跋扈した背景は、若者の深刻な失業問題でストレスのはけ口を酒に酔って暴れる行為に認めている。
・日本サッカー、代表サポーターもマナーの良さで世界中から賞賛されているので、迷惑系もどきの「なんちゃってフーリガン」がいる場所などない。
1985年5月29日。
ベルギーの首都ブリュッセルにあるヘイゼル・スタジアムにおいて、UEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズカップ決勝戦が行われた。
カードはイングランドのリバプール対イタリアのユベントス。6万人収容の大きなスタジアムはほぼ満席で、観客の多くの部分を双方のサポーターが占めていた。
この当時イングランドの一部サポーターには、すぐに暴力沙汰を起こすとの悪評がついて回っており、そうした連中はサポーターではなくフーリガンと呼ばれていたことは、前回お伝えした通りである。
ただ、フーリガンという存在はイングランドに限られたものではなく、サッカーが盛んな国では、しばしばこうした騒ぎが起きていた。頻度と騒ぎの規模において、イングランドが図抜けてひどかったことも事実だが。
この試合が「中立国」ベルギーで開催された理由も、これでお分かりいただけると思うが、なおかつ主催者側は、双方の応援席を急増のフェンスで区切っていた。
ところがキックオフのおよそ1時間前(現地時間の午後7時頃)に、リバプール側の一部がこのフェンスを押し倒してユベントス側に殴り込みをかけたのである。
乱闘騒ぎから逃れようと、多くのサポーターが塀際に押し寄せた結果、将棋倒しとなった。
さらに多くがフィールドに飛び降りて逃れたが、リバプール側は、長さ数メートルもの角材(壊したフェンスの材料)を振るってイタリア人を追いかけ回す。一方、イタリア側は一人が拳銃を乱射。
こうした結果、死者39人、負傷者400人以上という大惨事となってしまった。
ブリュッセル市警では手に余ると見て、武装憲兵隊が出動し、どうにか鎮圧したのだが、驚くべき事に、それでも試合が行われた。
多数の救急車とヘリコプターが出動し、重傷者を市内の病院に搬送した他、遺体は急増のテントにひとまず安置され、1時間30分遅れでキックオフとなったのである。
報道によれば、当時ユベントスを率いていたジョバンニ・トラバットーニ監督は試合中止もやむを得ない、と主催者側に進言したが、
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