仏、中東情勢受け、不穏な空気に包まれる
Japan In-depth / 2023年10月18日 17時0分
Ulala(著述家)
「フランスUlalaの視点」
【まとめ】
・イスラム主義者の卒業生が高校教師を殺害。テロ警戒水準を最高に引き上げ。
・要注意人物、監視対象者は仏全土で約5100人。内相は「滞在許可の取り消し」呼びかけ。
・ルーブル美術館にも爆破予告。中東情勢受け何が起きてもおかしくない雰囲気。
フランス北部アラスで10月13日、刃物を持った男が高校を襲撃する事件があり、教師1人が死亡、別の教師ら数人が負傷し、男は警察に逮捕された。逮捕された男はロシア出身の20歳で、襲撃した高校の出身者。イスラム主義者の男は犯行当時、「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)」と叫んだと言われている。
マクロン仏大統領は13日、「イスラム主義者によるテロの蛮行」と非難し、国内のテロ警戒水準を最高に引き上げた。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスの戦闘が、フランスに持ち込まれることで暴動に発展することが懸念されており、そのためパレスチナを支持するデモが禁止されるなど厳戒態勢がとられていたところだ。ダルマナン内相は、さらに警戒強化のためにフランス全土に兵士7千人を配備すると発表した。
■男の生い立ち
アラスの高校で襲撃事件を実行したとされるモハメッド・Mは、現在20歳。襲撃した高校出身で、高校に通っていた当時は優秀な生徒との評価を受けていたという。
チェチェンに隣接したイスラム教徒が多数派を占めるロシア連邦共和国イングーシ共和国で生まれた彼は、2008年、5歳のときに両親と4人の兄弟姉妹とともにフランスに来た。フランスにたどりついた当時はレンヌに住み、子供達はそこで学校に通ったが、レンヌがあるイル=エ=ヴィレーヌ県では亡命申請が拒否された。そのため2014年はじめにロシアへの強制送還の対象となったものの、支援団体の活動により強制送還が撤回され、その後、アラスに移動することとなった。モハメッド・Mが12歳の時だ。
2018年には、ついに父親が強制送還されたが、モハメッド・Mは、未成年であったため合法的にフランスに残ることができた。未成年者は保護されることが決まっているため国外追放できない存在でもある。この結果、モハメッド・Mが2021年に18歳になるまではまったく問題なく学校にも通えたのだ。
しかし、18歳以降はフランスでの日常を続けることができなくなった。通常なら、13歳未満でフランスにたどりついた未成年は、基本的には18歳以降もフランス滞在が認められることになっている。しかし、モハメッド・Mは許可されなかった。許可が下りなかった理由は、モハメッド・Mの場合は、彼の過激化に関して教育チームがまとめたファイルがあったからのようだ。フランスの入国・滞在法第L631-3条によれば、例えば、「国家の基本的利益を損なう可能性のある行動をした場合」、「テロ行為の性質を持った活動」、または「暴力をはたらいた」「挑発行為をおこなった」ときには滞在は許可されない。
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