ジョブズが求めた禅、「今」への可能性~福井・永平寺から禅、ウェルビーイング、AIを考える~
Japan In-depth / 2023年10月31日 23時0分
禅の教えが、企業研修などに生かされているとなると、今日的あるいは将来的な可能性を感じさせる。
イベントの後半は、「地域社会」「コミュニティ」「命」「信仰」「テクノロジー」など異なる分野とウェルビーイングとの関連を考えるグループ対話。ランダムに集まった参加者どうしがつながり、真剣な対話が、対面で集まった意味をさらに深める。
イベントが、一つの結論を得たわけではない。しかし、この日参加者は、様々なキーワードを心に会場を去った。
「出会い」や「ご縁」というキーワードは対話中、度々浮かび上がった。
東京から参加した橋本英重氏(ビジネスコンサル会社ミッドメディア社長)はイベント後、こう話してくれた。
「今回の感想は、『出逢い』という無形物は無限だということ。そして、この無限こそが、人間を人間たらしめたのではないかということです。人間も生きものの一部で、生きることに向き合う個人として、仲間と共に、生きて死んでいく、そういうことを、しっかりとappreciate(かみしめる)みたいなことが、ウェルビーイングなのではないかと考えました」
永平寺町「駅前宿舎 禪」を経営する酒井和美さんは、元町会議員で、町の歴史や宗教に詳しい。地元代表として、他県の人を交えたこのイベントに手応えを感じたようだ。
「福井の地元イベントは、ふんわりしたものが多いが、このイベントは対話がポジティブで弾んだ。対話で大切なことは、その人の人生がグッと感じられるような重たい言葉や、偶然あった発言が、刺激、思考を加速させること、閉じていた引き出しが開くことだと思う」
▲写真 イベントは永平寺の広間「傘松閣(さんしょうかく)」を模した広間で開かれた(筆者撮影)
企画した佐竹氏は、こう総括する。
「今回招待制にしたが、もっと集まってもらえるはずだったし、構成ももっと練り込みたかった」とし、得点すれば「70点ぐらい」とした。しかし、冒頭彼は「幸せになるための希望や真理について考える機会にしたい」と言った。取材した私は、誰もが驚くほど活発に対話し、真剣に考えているのを目撃した。結論は異なっても、ストンと何かが胸の中で落ちる思い、そんなものを共有していたのも間違いない。
前出の鎌倉マインドフルネス・ラボ社長、宍戸氏もこう語った。
「禅とウェルビーイングの文脈で、永平寺町の町おこしも考える企画だった。禅は日本の文化でありながら、海外の人が注目し、彼らをインスパイアしている。それは日本人にとっても大事なことで、これが単発のイベントに終わらず、どう次につなげていくかが大切です」
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