世界に冠たる大麻漬けドイツ(?) たまにはタバコの話でも その5
Japan In-depth / 2023年11月1日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・独政府は大麻合法化法案を閣議決定。流通を管理し闇市場を壊滅させるため。
・法案成立ならイタリアなど周辺諸国に与える影響は小さくない。
・大麻合法化に向かう国の本当の狙いはタバコに代わる「内需」と税収増?
「大麻を取り締まる諸政策は、遺憾ながら全て失敗に終わった。かくなる上は合法化するしかない」
冗談みたいな話だが、ドイツではこれがネタでもなんでもなく、与党政治家の間で大真面目に議論され、そして、大麻を合法化する法案が閣議決定された。今月16日のことである。
ドイツ発の、複数の外電が伝えたところによれば、最大500人までの会員を募って大麻の栽培と販売を行う団体を登録制で合法化し、また、個人でも18歳以上であれば25グラムまでの所持と、3株までの自宅での栽培も合法になるという。
冒頭の発言は、オラフ・ショルツ首相自身のもので、流通を管理することを通じて闇市場を壊滅させ、粗悪品による健康被害から若者を守るという、一応は大義名分のある法案だという論理だ。
当然ながら反対論も噴出しているようだが、ドイツと日本とを行き来して暮らしている、本誌でもおなじみのサンドラ・ヘフェリンさんによれば、
「近年の政党状況から見ますと、法案が成立する可能性は結構高いように思います」
ということらしい。彼女も個人的には大麻の合法化には大反対だそうで、理由は、
「やはり、英語で言うGatewayになりますからね」
とのことであった。
2020年、港区に高輪ゲートウェイ駅が開業したが、つまりは「表玄関」と訳せる。
大麻は「ドラッグ・ゲートウェイ」であるというのは、前々から言われていることで、純日本風(?)に述べるなら、地獄の一丁目、とでもなるだろうか。
具体的にどういうことか、サンドラ・ヘフェリンさんの言葉を借りると、
「重度の麻薬中毒で身を滅ぼした人たちは、まあ全員が全員というわけではないですけど、多くの場合、興味本位で大麻を吸ったのが、破滅の入り口だったわけです」
とのこと。彼女はドイツの大麻事情には、非常に敏感になっているようで、
「おかしな話ですけど、目の前で吸っていなくても、なんとなく、この人は(大麻を)やってるな、と分かるようになってきました。目が肥えてきたんです」
などと言って笑っていた。骨董品じゃあるまいし、と私もつられて笑ってしまったが、
「そういう人からは、今度日本に行ったら泊めてね、と言われても、適当にあしらうようにしています。日本の私の家に大麻なんか持ち込まれたら、冗談ごとで済みませんから」
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