アメリカはなぜ安倍晋三を賞賛したのか
Japan In-depth / 2023年11月6日 17時0分
ワシントンでは安倍晋三首相がなお健在と思わされる体験をこの9月18日にも味わった。この日の夕方、アメリカ連邦議会の議事堂下院側の一室で福島産をも含む日本の水産物を賞味するパーティーが開かれた。主催はワシントンの日本大使館だった。地元の寿司レストラン「鮨小川」の練達のシェフが日本の新鮮な魚を使って作る寿司を下院議員たちが食べるという集いだった。
しかしその背後には日本側からの強烈な政治メッセージがこめられていた。東京電力福島第一原子力発電所が処理水を海洋に放出したことに対して中国政府が「汚染水だ」と断じて、日本の水産品の輸入を全面停止した。しかしその処理水の安全性は国際原子力機関(IAEA)によっても完全に証明されている。アメリカをはじめとする主要諸国もすべて日本の安全性の主張に賛成している。
だからこの時期に日本の魚を使った寿司を食べることは日本側の主張に同意し、中国側の主張を非と断じることになる。
この議事堂内のそんな集いになんと現職の下院議員が共和、民主両党40人ほども出席し、みなおいしそうに寿司を食べたのだ。そのなかには福島沖でとれたヒラメやスズキも入っていた。(参考記事:「米議員たちが日本の水産物に舌づつみ」2023年9月22日)
▲写真 寿司を楽しむ米議員ら(2023年9月18日アメリカ・ワシントンDC)筆者提供
さてなぜこの出来事が安倍晋三氏につながるかというと、この寿司パーティーに顔を出した下院外交委員長のマイケル・マコール議員が「いまや日米同盟も、アメリカと日本のそれぞれの中国への政策も、安倍晋三首相が示した路線を着実に進んでいますね」と語ったのだった。
マコール議員には私は何回か接触したことがあり、今回も一対一の立ち話のなかで、同議員はごく自然にそんな言葉を口にした。ベテランのマコール議員はもちろん安倍首相との直接の交流があったのである。
さらに現在のアメリカで安倍氏の軌跡を強く想起させるのは、ドナルト・トランプ前大統領の活発な動きである。トランプ氏は民主党、共和党の激突のなかでいまアメリカ政治の最大の論議の的だといえる。そのトランプ氏と安倍氏とが緊密な絆を築き、4年ほども日米関係に特別な時代を生んだことは米側でも周知の事実だった。
日米の首脳同士の「相棒」とまで評された親密な仲はトランプ大統領に安倍首相への信頼とまで呼べる態度をとらせた。「アメリカ第一」を唱え、外国の代表には冷徹な姿勢でのぞんだトランプ大統領としては珍しく、安倍氏には「シンゾーはすばらしい男だ」などと、礼賛の言葉を惜しまなかった。
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