中国の「一帯一路」は失敗だった
Japan In-depth / 2023年11月7日 17時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・「一帯一路は失敗」が米国の見解。習氏「小さく美しく」への方針転換でも裏づけられる。
・一帯一路は目的を果たさず、世界規模の債務拡大と中国への反発や不信を増すだけに終わった。
・日本が参加していたら国際的恥辱だった。
日本が加わらないで、本当によかった。参加していたら、いまごろ中国とともに国際的な恥辱となっていただろう。とくに安倍政権時代には政権の一部で参加に傾いた向きもあったのだ。中国政府の野心的なインフラ建設構想、「一帯一路」のことである。
この構想は中国の習近平国家主席が就任後まもない2013年10月、内外に大々的に宣伝して打ち上げた大計画だった。中国から中央アジア、中東などを経て、陸上、海上の両方で中国主体の高速の道路や鉄道、空港、そして港湾や水路などインフラ施設を建設するという構想である。中国はそのために貯めてきた巨額の資金を参加の諸国に融資する、というわけだ。
日本では当時の安倍政権内で親中派の二階俊博氏や今井尚哉氏らが日本もこの一帯一路に加わることを提唱していたという。だが安倍政権全体としては結局は不参加と決めた。
さてその構想打ち上げから10年、中国政府はこの2023年10月中旬、一帯一路の10周年を北京での大規模な国際集会で祝い、その成功を強調した。
だがアメリカ側ではこの構想を当初から中国の覇権の追求とみて警戒し、批判していた。いまや客観的にみても、その中国自身の狙いも失敗に終わったといえるようだ。少なくともアメリカ側の見解は「一帯一路は失敗」というのがコンセンサスなのである。
ただし日本側ではこの構想を失敗だと明言する人はきわめて少ない。いまやどうみても挫折、よくみても不成功としか判断するほかないこの構想を「まあ、それなりの成果をあげた」というような曖昧な表現で総括する中国専門家が大多数のようなのだ。その背後には中国政府への日本の中国専門家たちの生来の忖度や恐怖が散らついている。
一方、アメリカ側の反応では、「荒廃への中国の道・北京の一帯一路の真の被害」と題する論文が代表的だった。大手外交雑誌の「フォーリン・アフェアーズ」10月号に載った長大な同論文はスタンフォード大学の国際問題研究所の2人の研究員フランシス・フクヤマ、マイケル・べノン両氏が筆者だった。
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