「豊かな国」はどこへ消えた?(上)こんな日本に誰がした その1
Japan In-depth / 2023年11月20日 17時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・昨今の日本で豊かさを実感できている人がどれほどいるのか。
・「ビッグマック指数」、日本は55カ国中44位。
・円安で順位を落としているだけではなく、この指数は各国の国民の購買力を示す指針。
アグネス・チャンという歌手がいる。
香港出身(生来の国籍は英国)で1972年に来日し、歌手デビュー。
昭和世代にとっては、愛くるしい笑顔と少々たどたどしい日本語が印象的なアイドルであったが、初代日本ユニセフ協会大使を務めるなど、幅広い活躍でも知られる。
今で言う「高学歴タレント」の走りでもあった。上智大学、カナダのトロント大学を出て、米国のスタンフォード大学大学院より博士号(教育学)を授与されている。昨今、大学出の芸能人もさほど珍しい存在ではなくなってきているが、博士はさすがに稀だろう。
彼女がブレイクした結果、香港や台湾の女性歌手が、相次いで日本でデビューするという現象も実際に起きた。いわゆる韓流ブームに先立つこと30年以上の話である。
個人的には、メディアを通じて知る彼女の言動の中で、特に感心させられたものがあった。
1986年に元スタッフの日本人男性と結婚し、3人の子宝にも恵まれたが、前述のようにユニセフの活動を通じて、戦争や飢餓で苦しむ世界の子供たちへの支援を呼びかける一方、自分の子供には、
「あなたたちは、この平和で豊かな日本に生まれたというだけで、最初から人生80点もらったようなもの。残り20点分くらいは、自分の力でなんとかできるよね」
と言い聞かせていたという。
たしかに、ウクライナやパレスチナの惨状を知るにつれ、日本はまだまだ平和で有り難い、とは思える。
昨年の春、ロシアによるウクライナ侵攻が開始された頃には、日本ハムファイターズのチアリーダーたちの「きつねダンス」が大変な人気であったし、昨今では、東京ディズニーランドの「ジャンボリー・ミッキー」に出演するダンサーの女性が動画サイトを席巻している。ここまでくると、さすがにどうなのか、と思うこともないではないが、これについては項を改めよう。
本稿で問題にしたいのは、昨今の日本で豊かさを実感できている人がどれほどいるのか、ということである。
データの上でも、総人口が半分ほどでしかないドイツにGDPで追い抜かれ、かつての米国に次ぐ2位から、4位にまで後退した(2位中国)。
円安ドル高の傾向に歯止めがかからないという話題については、大手メディアが連日報じているが、ユーロなど大半の通過に対しても値を下げ続けているのが事実だ。「ビッグマック指数」で一目瞭然である。
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