「豊かな国」はどこへ消えた?(下) こんな日本に誰がした その2
Japan In-depth / 2023年11月21日 13時34分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・日本人の多くが給与所得は増えないのに物価は上がり続ける状況に苦しめられている。
・それは「異次元の金融緩和」が大失敗だったからだ。
・日本はスタグフレーションに足を踏み入れており、その原因は自公政権の経済政策の失敗にあった。
国民の購買力と通過(為替)価値の関係性について、分かりやすい「ビッグマック指数」というものがあることと、日本は2000年代までは上位グループに属していたものが、今や55カ国中44位になっていると、前回述べた。
一橋大学の野口悠紀雄名誉教授が『東洋経済』に寄稿した文章によると、米国におけるビッグマックの価格は5.58ドル、一方日本では、前回も述べた通り450円である。
これを等しくする為替レートを計算すると、1ドル=80.65円になるとのことだが、現実はどうなのかと言えば、この原稿を書いている11月17日の為替相場は1ドル=150.72円。実に5割以上も円安に振れているわけだ。
もちろん、これだけで「日本人の購買力は今や米国人の3分の2程度」などという結論を下すことはできない。物価指数・生活水準の差は、それほど簡単に割り出せるものではないし、海外生活が比較的長い私は、データと生活実感はしばしば一致しないことも理解している。
そうではあるのだけれど、今や日本人の多くが自国を豊かだと思うことができず、給与所得は増えないのに物価は上がり続ける状況に苦しめられていることは、争えない事実だ。
どうしてこのようなことになったのかと言えば、第二次安倍内閣が断行した経済政策、とりわけその軸となった「異次元の金融緩和」が大失敗だったからであると、私は考える。
簡単に時系列をおさらいしておくと、2012年12月26日に第二次安倍内閣が発足し、金融緩和、財政出動、成長戦略を「3本の矢」とする経済政策を実施すると発表された。世に言うアベノミクスである。
その中で「第1の矢」と位置づけられたものこそ、2013年4月より日銀が実行に移した金融緩和で、時の黒田東彦総裁が、
「質・量ともに次元の違う金融緩和を行う」
と発表したことから、異次元の……と呼ばれるようになった。
当時の日本はデフレ・スパイラルに苦しめられていたので、このアベノミクスに対する国民の期待は大きかった。本誌の読者には釈迦に説法かも知れないが、
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