「豊かな国」はどこへ消えた?(下) こんな日本に誰がした その2
Japan In-depth / 2023年11月21日 13時34分
これがもし、1ドル=130円になれば、130億円の売上金が入る。言い方は悪いが、円安に振れたおかげでなんの努力もせずに50億円の増収となるわけだ。ある意味、真面目に働くのがバカバカしくなる話ではないか。
問題はそれだけではない。
というより、むしろこちらの方が本質的な問題なのだが、日本の輸出企業が潤ったのは、もっぱら為替が円安に振れたおかげで、売り上げやシェアが伸びたわけではない、ということだ。
実際には、家電や自動車など主たる輸出産業は、2010年代以降、韓国などの猛追を受けてシェアをじりじりと減らしてきていた。
データだけでなく、実際にイタリアやスペインのホテルに泊まると、備え付けの薄型TVは大抵サムスン製で、街にはヒュンダイの乗用車も少しずつ増えているのがよく分かる。
韓国はEUとの間でFTA(自由貿易協定)を締結しており、たとえば日本製の薄型TVには20%の関税が課せられるのに対し、韓国製は無税なのだ。
こうした側面を無視して、これ以上人件費が高くなったら、ますます国際競争力が低下する、などという理屈を持ち出して賃上げを抑制し、その一方、無理筋とも言える円安政策でもって輸出産業の利益だけは確保してきた。実は、これこそアベノミクスの実態だったのである。アホとまで言えるか否かはともかく、経済政策としては間違いなく失敗であった。
このところ岸田内閣の支持率が低迷している。
政務官クラスの相次ぐ不祥事=任命責任など、自業自得だと言ってしまえばそれまでだが、私見ながら、それが全てだとも考えにくい。安倍内閣の支持率は一貫して高かったが、閣僚はもとより、首相自身にも「桜を見る会」をはじめ、数々のスキャンダルがあったではないか。
とどのつまり、現在、日本がスタグフレーション(経済停滞下でのインフレ)に足を踏み入れていること、その原因が自公政権の経済政策の失敗にあったということに、有権者が気づき始めている、ということではないだろうか。
本シリーズは、様々な角度から検証を試みる。乞うご期待。
トップ写真:東京歌舞伎町歓楽街を自転車で走るウーバーイーツの配達員たち(2020年4月11日 東京)(本文とは直接関係ありません)
出典:Tomohiro Ohsumi / Getty Images
その1はこちら。
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